【黒柳徹子が大好きな人】キュリー夫妻は「本当の献身をした人たちだなぁ」と思うのです
黒柳徹子さんが心から「この人が大好き!」と思う、キュリー夫人について語ります。 〈画像で見る〉黒柳徹子さんが出会った「美しい人」
私が出会った美しい人【第28回】物理学者・化学者 マリー・キュリーさん
私は今まで、舞台上で何人もの実在した人物を演じてきました。その中でも、心から「この人のことが大好き!」と思うのがキュリー夫人です。「偉人伝」なんかに真っ先に登場する人物ですし、ノーベル賞を2回も受賞した科学者だということは皆さんもご存知でしょうが、私がキュリー夫人を素敵だなと思うのは、素晴らしく一途な情熱の持ち主だからです。 戦争が終わってしばらくしてのこと。まだ食べ物もロクになくて、東京の街もゴタゴタしていたとき、女学生だった私が初めて観た大人の映画が『キュリー夫人』でした。女性の科学者が二度もノーベル賞をもらうような仕事をしていることが驚きでしたし、夫人が夫を心から愛し、尊敬して、二人して一途に研究に没頭している姿にも心を打たれました。二人が惹かれ合っていく様子なんかはユーモアたっぷりで、「人生は、人との出会いによって変わっていくんだなぁ」「何かに打ち込むって素晴らしいことだなぁ」なんて、いろんな感情が溢れたことをよく覚えています。以来、私はキュリー夫人に興味を持って、さまざまな伝記を読みました。 19世紀後半、現在のポーランドのワルシャワで生まれたマリーが物心つく頃には、祖国は帝政ロシアに併合された状況にありました。帝政ロシアは知識層を監視してその行動に制限をかけていて、祖父も父も科学者で、母は教育者だった一家は地位や財産を奪われ、貧しい生活を強いられ、挙げ句、母と姉を病で失ってしまうのです。当時はまだ、「女性には研究者の才能などない」という偏見が、はびこっていた時代で、マリーがパリのソルボンヌ大学に進学したのは、女性でも科学教育を受講可能な機関がそこくらいしかなかったからでした。 大学で学士号を取得後、当時から天才科学者の誉れ高かったピエールと出会い、恋に落ちます。映画『キュリー夫人』で二人が惹かれ合う様子は、笑ってしまう場面もありながら、まるで魂の共鳴のように描かれていました。心から信じられる人と出会うと、人はこんなにも強くなれるのかと思いました。ピエールに出会わなければ、彼女の人生は、まったく違ったものになったでしょう。