「非ブラック企業認定」は就活に使える?/木暮太一のやさしいニュース解説
書類だけでブラック企業はわからない?
―――「おぉ! これで就活生も安心だね!」 いえ、残念ながらそうとは言い切れません。というのは、これらの条件を満たすブラック企業もたくさんあるからです。 いくら社員の残業状況を公表させても、「そもそも残業していないことにする」という企業はたくさんあります。残業代をまったく払っていなくても、「残業していない」とすれば、この認定を受けられてしまいます。 会社都合で「辞めてくれない?」と社員に言っていたとしても、書類上そんなことを書くブラック企業はありません。法外なノルマに耐えられず辞める社員は「自主都合」として処理できてしまいます。 この認定は、書類を出せばOKで、実地調査はないようです。そのため、本当のブラック企業は、ウソの報告を国に上げるでしょう。むしろ、自社の労働環境がひどいことを正直に国に出す企業は、むしろ「ブラック企業」ではないかもしれません。 ―――「じゃあ、意味がないってこと?」 参考程度にはなると思いますが、この認定を受けている企業が「いい企業」、受けていない企業が「ブラック」と考えてはいけません。 社員がイキイキと楽しく仕事をしている会社は、伸び盛りで受ける仕事も多くなり、残業も多い可能性があります。そんな企業では、たくさん社員を雇いますが、中には当然「雰囲気が嫌い。思っていた仕事と違う」といって辞める人もいます。でも「ブラック企業」ではありませんね。 どんな職場でも、人によって「合う・合わない」がありますし、たとえいい会社でも、直属の上司がパワハラ上司であれば、「ブラック」になります。 数字で表せるのは、ほんの一部に過ぎません。そういうつもりで各自が判断しなければいけませんね。 ----- 木暮 太一(こぐれ・たいち) 経済ジャーナリスト、(社)教育コミュニケーション協会代表理事。相手の目線に立った伝え方が、「実務経験者ならでは」と各方面から高評を博し、現在では、企業・大学などで多くの講演活動を行っている。『今までで一番やさしい経済の教科書』、『カイジ「命より重い!」お金の話』など著書36冊、累計100万部。最新刊は『カイジ「勝つべくして勝つ!」働き方の話』 。