『地面師たち』豊川悦司、『キングダム』大沢たかお 怪演が“ネットミーム化”された俳優たち
“サイコキラーぶり”が話題を呼んだ『死刑にいたる病』の阿部サダヲ
●阿部サダヲ『死刑にいたる病』 コメディからサスペンスまで様々な役柄を演じてきた個性派俳優でもある阿部サダヲもネットミーム化された1人だ。松尾スズキ主宰の劇団・大人計画に所属する阿部は、舞台『冬の皮』でデビュー。舞台での活躍にとどまらず、ドラマでは『木更津キャッツアイ』(TBS系)、『タイガー&ドラゴン』(TBS系)、『アンフェア』(カンテレ・フジテレビ系)シリーズ、『医龍 -Team Medical Dragon-』(フジテレビ系)シリーズ、『マルモのおきて』(フジテレビ系)、NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』など、ジャンルレスに出演し、現在の“阿部サダヲ”のイメージが出来上がってきた。 阿部は何でもできる俳優という印象が強い。とはいえ、日本アカデミー賞優秀主演男優賞をするきっかけとなった初主演作『舞妓Haaaan!!!』で見せたような、コメディ色の強い演技があまりにも強烈で、喜劇俳優というイメージを持っている方も多いはず。“京都祇園の舞妓さんと野球拳をする”という夢を持つサラリーマンの鬼塚公彦を演じた阿部のハイテンションかつエネルギッシュな演技には元気をもらった。 そんな阿部が『死刑にいたる病』(2022年)で演じたのは、言葉で巧みに人を操ることを生業としているサイコキラー。キービジュアルを見ただけでもゾッとするような阿部の表情が映し出されているが、映像で見る阿部はもっと恐怖だ。筧井雅也(水上恒司)と対面する阿部の表情は一切動かない。ただ、ギロっとした目で見つめている、その佇まいが得体のしれない何かを見ているようでただひたすらに恐ろしいのだ。映画『彼女がその名を知らない鳥たち』(2017年)でも背筋が凍るような演技を見せてきた阿部だが、それをはるかに超える名演だった。公開後には、『死刑にいたる病』の考察・解説動画を投稿する者が続出するなど、阿部の怪演ぶりは大きな話題となった。 かつて一斉を風靡した作品のセリフやビジュアルがネットミーム化し、再び脚光を浴びるケースも少なくない。だが、こうしたネットミームを作り出しているのは、他でもない俳優陣の個性や演技力の賜物であることを、改めて書き添えておきたい。
川崎龍也