『地面師たち』豊川悦司、『キングダム』大沢たかお 怪演が“ネットミーム化”された俳優たち
ドラマや映画の内容を超えて、その中で発したセリフが独り歩きする。最近ではSNSで該当シーンが切り取られて、いわゆる“ネットミーム化”するケースが後を絶たない。映画の宣伝にもなるし、俳優としても注目を集める絶好の機会であるわけだが、登場人物たちを演じる俳優陣の迫真の演技がなくてはならない。本稿では、「ネットミーム化」されるほどの怪演ぶりを見せた俳優陣を紹介する。 【写真】『キングダム』で王騎役を務めた大沢たかお ●豊川悦司『地面師たち』 7月25日よりNetflixにて世界独占配信されているNetflixシリーズ『地面師たち』において一躍脚光を浴びているのが豊川悦司だ。『3-4X10月』(1990年)や『12人の優しい日本人』(1991年)で早くも俳優として深みを感じさせる演技を見せていたが、お茶の間に豊川の名前を浸透させたという意味では主演を務めた『NIGHT HEAD』(フジテレビ系)が真っ先に挙がるだろう。超能力を持った霧原兄弟が15年間隔離されていた研究所から抜け出し、人々と触れ合いながら自分たちの存在意義を模索する旅に出る姿を描いた同作は、超能力がもてはやされていた時代背景に加えて、霧原兄弟を演じた豊川と武田真治の名コンビぶりが話題となり、大ヒットを記録した。 『愛していると言ってくれ』(TBS系)では常盤貴子とダブル主演を務め、幼いころに聴覚を失い、声を発することができなくなった青年画家の榊晃次を熱演。手話を駆使する難しい役どころとなったが、豊川は言葉を伝えられないもどかしさを手話に乗せて巧みに表現し、そのセクシーな佇まいは当時の女性たちを虜にした。 近年は年齢とともに渋い役を引き受けていくことが増えてきたが、そのひとつが『地面師たち』である。『エルピス ―希望、あるいは災い―』(カンテレ・フジテレビ系)を手がけ、第60回ギャラクシー賞テレビ部門大賞を受賞した大根仁による同作は、不動産売買をエサに巨額の金を騙し取る詐欺師集団・地面師による前代未聞の事件を描くクライムサスペンス。豊川は地面師集団のリーダーで元暴力団幹部のハリソン山中を演じた。 言葉を選ばずに言えば“胡散臭い役”だが、豊川の渋みを増した演技と、余韻を感じさせるセリフ回しがとにかく絶妙なのだ。「最もフィジカルで、最もプリミティブで、そして最もフェティッシュなやり方でいかせていただきます」というセリフは、キャッチーさも相まって、お笑いコンビ・霜降り明星のせいやが公式X(旧Twitter)でモノマネ動画を投稿するなど、SNSでバズを引き起こしている。 ●大沢たかお『キングダム』シリーズ 『キングダム』シリーズで王騎役を務めている大沢たかおもその1人だ。もともと『MEN'S NON-NO』などのファッション誌でモデルとして活躍していた大沢は、『解夏』(2004年)、『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)、『陽気なギャングが地球を回す』(2006年)、『ミッドナイト・イーグル』(2007年)などに出演し、日本の映画界を代表する俳優へ。 大沢といえば思い起こされるのが『JIN-仁-』(TBS系)ではないだろうか。ある事件がきっかけで江戸時代にタイムスリップした現代の脳外科医・南方仁が、現代の医療技術がない中で、人々の命を救いながら、自らも幕末の動乱に巻き込まれていくヒューマンストーリーだ。タイムスリップした江戸では、自らの行動が歴史を変えてしまうことに対して葛藤しながらも、医者として患者と実直に向き合う大沢のまっすぐさに心を打たれた。 『キングダム』シリーズは、中国春秋戦国時代を舞台に、天下の大将軍になるという夢を抱く戦災孤児の少年・信(山﨑賢人)と、中華統一を目指す若き王・嬴政(吉沢亮)を描いた超大作だ。大沢が話題となったのは2023年のこと。映画『キングダム』で腕を組み、微笑んでいるシーンがSNS上で話題となり、一時期は大沢の画像が様々な場面で使われているのをよく目にした。 大沢が演じる王騎は「天下の大将軍」と称される人物。『キングダム 大将軍の帰還』では龐煖(吉川晃司)との頂上決戦が描かれるが、普段は凛々しく余裕の笑みを浮かべている王騎が「天下の大将軍」としての威厳を見せつける。大沢の重厚で迫力のある演技が見られる龐煖との決戦は、間違いなく映画史に残るベストシーンだった。