オール沖縄で伝統ハーブ商品化 カラキ立役者は高校生 ケーキ大ヒット
沖縄県立北部農林高校(名護市)は、香料に使われる自生の「カラキ(オキナワニッケイ)」を振興するプロジェクトの成果を上げている。カラキの粉末を使ったケーキを県内企業と協力して限定販売したところ、わずか1週間で1万個以上を売るヒットとなった。カラキの特産品化を進める大宜味村では加工品開発の問い合わせが相次ぎ、苗木を育てる農家が増えてきた。 【画像】苗を定植して3年後のカラキ園地 カラキはシナモンに近い香りで、琉球王朝時代から生薬や茶に活用した伝統的なハーブ。かつては県全域で栽培されたが、近年は北部の大宜味村や国頭村で作られる。 大宜味村では2016年から苗木生産、1次加工、商品開発に力を入れ、カラキの特産品化を進めてきた。同校は同村から調査事業を委託されたNPO法人の依頼で「カラキプロジェクト」を始動。産地振興に向け、加工品開発を進めてきた。 22年にカラキを使ったパウンドケーキが完成。地域の道の駅やコンビニで販売した。完成には2年半かかった。食品科学科3年の石倉歌笑さん(18)は「ようかんなど9品目を試したが、味や香り、色の出方が良く、焼き菓子と相性が良い」と、ケーキ作りに打ち込んだ。 同年10月に優良県産品認証を取得。食品メーカーのオキコ(西原町)や沖縄ハム総合食品(読谷村)などへ連携を広げ、商品価値を高めた。 ケーキには持続可能性の観点から樹皮や根ではなく葉を使用。幸地咲輝さん(17)は「シナモンが苦手な自分にも爽やかで良い香り」と話す。
23年11月に県内のローソンで1個189円、計1万1455個を限定販売。1週間で「95%が売れ、非常に好評だった」(ローソン沖縄)といい、同社は再販を検討するという。 食品以外ではアロマや温浴施設でも活用されるカラキ。消費の開拓と合わせ、大宜味村では優良苗を育成して農家へ無償配布する動きが進む。かつて5人だった生産者は23年には35人に増え、耕作放棄地を活用して現在は約1000本が植えられる。 カラキの栽培や普及に尽力するクガニキッチン(同村)の宮城美和子代表は「機能性などまだ謎の多い植物。食品開発で特産品の地位を高め、沖縄の新素材として広く親しまれてほしい」と話す。 この取り組みをまとめた同校の発表は23年度の日本学校農業クラブ(FFJ)全国大会で文部科学大臣賞を受賞するなど、高い評価を得ている。(柴田真希都)
日本農業新聞