人は話の「2割」しか記憶できない…「ロジカルなのになぜか伝わらない人」がハマっている落とし穴
■人は話の「2割」しか記憶できない 説明をするとき、「論理的な伝え方を磨けばしっかり伝わるだろう」と考える人がいます。間違いではありませんが、論理的な伝え方を磨く前に知っておいてほしいことがあります。 それは、人は話の「2割」しか記憶できないということです。 これは、聞く気がある、聞く気がないという意味ではありません。 話を聞く気持ちがあっても、その内容を次の瞬間には忘れてしまうのです。 私たちの脳は、生きていく上で不要だと判断した情報は次から次に消去されるようにできています。 そのため、どんなに重要なことであっても、聞き手の脳が必要と判断したこと以外は記憶できないのです。 諸説ありますが、脳科学の世界では、短期記憶(一時的に脳に記憶される情報)で覚えていられるのは、平均すると7項目程度とされています。時間にして30秒が限界ともいわれています。 例えば、携帯電話の番号を口頭で伝えられて、どのくらいの間記憶していられると思いますか? おそらく、10秒前後が限界ではないでしょうか。 このように考えてみると、そもそも、脳の仕組みからして話したことの全てを覚えてもらうのは無理というわけです。 つまり、説明は、「断片的にしか覚えられない」という前提を理解すること。 その上で、「要点だけは確実に記憶してもらう」ことが求められます。 これからは、「説明が全部伝わらなかった……」と悩むのも、「私はちゃんと説明したのに、なんでこの人は話を覚えていないの?」と腹を立てるのもやめましょう。 話したことの全てを受け取って、実践してもらうのはそもそも無理なのです。 まずはこの前提を受け入れるだけで、説明上手に一歩近づくことができます。 ---------- 石田 一洋(いしだ・かずひろ) 関西テレビ放送アナウンサー 広島県出身、2002年早稲田大学商学部卒業。RKB毎日放送を経て2014年から現職プロ野球日本シリーズや、競馬G1、大阪国際女子マラソンなど全国ネットのスポーツ中継のほか、番組MCやリポーター、ニュース、ラジオパーソナリティ、ナレーション、司会と幅広く担当。アナウンスメントやドキュメンタリー制作のコンテスト優勝、受賞歴多数。第10回全国講師オーディションではグランプリを獲得。学校や企業研修では、「伝わる説明の技術」や「人を動かす伝え方」を中心に、「アサーティブコミュニケーション」「獲れる採用説明会の作り方」などを指導している。 ----------
関西テレビ放送アナウンサー 石田 一洋