驚きの決勝ゴールを決めた大迫勇也を仲間が祝福（写真◎J.LEAGUE）

　大詰めの明治安田生命J1リーグは第32節。11月12日には3位浦和レッズが首位ヴィッセル神戸を迎えるビッグマッチが行われた。勝ち点で8の差があるこの顔合わせは、優勝へ向けてどちらも負けることは許されない激戦に。最後に驚きのゴールで神戸が勝ち越して、次節にも優勝が決まる状況になった。 【動画】やっぱり大迫勇也！ 土壇場で決勝ゴールを決めきった ■2023年11月12日　J1リーグ第32節（＠埼玉S/観衆48,144人） 浦和 1-2 神戸 得点：（浦）ホセ・カンテ 　　　（神）マテウス・トゥーレル、大迫勇也

「本当にあきらめていなかった」

浦和vs神戸布陣

　優勝への道のりに、衝撃のドラマが待っていた。3位浦和と首位の神戸の激突は、驚きのゴールで神戸が逃げ切った。 　前半から神戸が押し込み、浦和が構える構図で進みながら、なかなかスコアが動かない膠着状態。マテウス・トゥーレルのゴールで神戸がようやく先制したのは、72分のことだった。 　しかし、負ければ優勝が消える浦和も意地がある。90＋1分、左からホセ・カンテが持ち込んで相手の妨害に遭いながらも運んでいく。そのままブライアン・リンセンをポストにしてリターンパスを受けると、右足でゴール左にねじ込んで、土壇場で同点に追いついたのだ。 　本当のドラマはここからだった。もう1点を取りに出た浦和は右サイドからFKを得る。中島翔哉のキックはファーサイドへ。ラストチャンスに攻め上がっていたGK西川周作がヘッドで触ろうと飛び込むが、その手前で神戸のGK前川黛也がキャッチした。 　西川が上がっているのを見て、大迫勇也は前線に残っていた。ゴールはがら空き。そこに、前川からのパントキックが真っすぐ飛んできた。前川は「ブレ球になってブサイクなキック」になったと話したが、大迫は「慣れてますから」とていねいに収めて、そのままゴールへと送り込んだ。90＋6分の決勝ゴールである。 　酒井高徳は「口では簡単に最後まであきらめないと言えるけれど、本当にあきらめていなかったことがチームとして良かったと思う」と、行動で表現できたことに胸を張った。 　神戸は前節に続いて、中盤の大黒柱の山口蛍が欠場、代わって酒井がボランチに入り、初瀬亮を右サイドバックに回すなどで対応した。前半はその右で佐々木大樹が躍動して何度も抜け出し、後半に入っても神戸が攻めて浦和が守る展開が続いていたが、最後の最後で大きく動くことになった。 　キックオフが1時間早い2位の横浜F・マリノスはセレッソ大阪に2-0で快勝して、勝ち点を63に伸ばしていた。神戸が引き分けていたら並んだところだったから、大迫の劇的弾はまさに起死回生。これで、早ければ次節にも初のリーグ制覇が決まるところまできた。 　神戸の吉田孝行監督も「まだ興奮状態です」と笑いながら臨んだ試合後の記者会見で、「みんな本当によくやってくれました」と称えた。これで王手。しかし、「マリノスさんは残り2試合も勝つと思っている」と話し、集中力がより研ぎ澄まされることになったことを明かす。「だから、自分たちも残り2試合を1試合1試合戦って勝つだけです」。吉田監督のその言葉は、選手たちも異口同音に繰り返していた。