2026年のホンダのF1復帰を、過去ホンダを世界一に導いた技術者・浅木泰昭が展望する
【ホンダが自信をつかむチャンス】 ーーアストンマーティンは現在、メルセデスからPU、ギヤボックス、リヤサスペンションを供給されています。2026年以降のホンダはレッドブルと組んでいた時代に比べて、やるべき仕事の領域が増えますね? レッドブルは自分たちでギヤボックスもサスペンションもつくっており、ノウハウを持っていました。でも、アストンマーティンはメルセデスのPUと車体部門の担当者が「これを使ってください」と言って渡されたものを使用する仕事しかしていませんでした。でも、これからはホンダと組んでワークスになるので、彼らもワークスの仕事の仕方を学ばなくてはなりませんし、ホンダも助けるべきところは助ける必要があります。 2026年シーズン、最初から競争力の高いクルマを開発するためにはホンダとアストンマーティンは"ワンチーム"にならなければなりません。ホンダの作業はレッドブルと組んでいた時よりも多くなると思いますが、それはホンダにとって次のステップだと思います。 レッドブルと組んでいた時は、ホンダは勝たせてもらったところがあります。2026年以降、アストンマーティンが勝つことができれば、ホンダが勝たせてあげたという評価になるはずです。ホンダが新しい自信をつかむチャンスになると思っていますので、大いに期待しています。 前編<F1は「忖度なし、容赦なし、配慮なし」 元ホンダ技術者・浅木泰昭が語る今季展望>を読む 【プロフィール】浅木泰昭 あさき・やすあき 1958年、広島県生まれ。1981年、本田技術研究所に入社。第2期ホンダF1でエンジン開発を担当。その後、初代オデッセイやアコードなどのエンジン開発に携わり、2008年から開発責任者として軽自動車のN-BOXを送り出す。2017年から第4期ホンダF1に復帰し、2021年までパワーユニット開発の陣頭指揮を執る。第4期活動の最終年となった2021年シーズン、ホンダは30年ぶりのタイトルを獲得。2023年春、ホンダを定年退職し、現在はDAZNのF1中継でコメンテーターを務める。2024年3月26日には初の著書『危機を乗り越える力』(集英社インターナショナル)を上梓。
川原田 剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi