集団登校をなぜしないの?千葉の事件から考える子どもを犯罪から守る方法
多くの学校で新学期が始まったが、先月末に千葉県松戸市で、小学校へ登校途中の女児が殺害された事件はまだ解決しておらず、不安な気持ちを抱えている保護者も多い。女児の通っていた学校では集団登校は行われておらず、女児も一人で登校していたという。文部科学省は2005年、安全対策の一つとして集団登下校の実施を例示する通知をしているが、行われていない学校もあるのはなぜだろうか。 子供を犯罪から守るために親が知るべき5つのこと
集団登校させてもらえれば…
川崎市のある小学校に娘(7)を通わせる母親(40)の元に夜、LINEで連絡が入った。同級生の母親からだ。「明日、うちの子が休むので一緒に登校しているお友達が1人になってしまう。その子を娘さんと一緒に登校させてもらえませんか」。この学校では、集団登校の仕組みがない。そのため、母親たちは自力で、一緒に通学してくれる子どもを探し、1人にならないよう気を配っているのだ。この母親は「学校が主導して集団登校をしてほしいと思っています。いつも綱渡りなので」と話す。 この母親によると、小学校に入るときに一緒に登校してくれる友達を親が探さなければならなかったという。知り合いがいない保護者は、通学路に親が立ち、通りすがった子どもに「うちの子どもと一緒に通学してもらえないだろうか」とスカウトしているケースもあるという。「うちは幸い同じマンションに一緒に行ってくれる子がいたので助かりました。とは言え、友達が休む場合などは、1人になってしまうので学校まで送っています」と説明する。「1年生で入学したてのときは特に、1人で学校に行くのは物理的に無理だった。しかし学校には集団登校の仕組みがない。千葉の事件も一緒に通学していた友達が引っ越してしまったことで1人での登校になったと聞き、他人事ではない。集団登校を学校が始めてくれればうれしい」。大人による通学路の見守りも毎日ではないという。
集団登校しないのはなぜか
同省の学校安全の推進に関する計画に係る取組状況調査(平成27年度実績)によると、全国の小学校20,015校のうち、集団登下校を実施している学校は12,632校で63.1%となっている。それより高い割合で行われているのが保護者らによる見守りで、17,895校(89.4%)で実施されていた。なお、3134校(15.7%)では、スクールバスによる登下校が行われている。上記の結果を踏まえると、保護者らの見守りが行われている学校が大半だが、4割近い小学校では集団登下校が行われていないことになる。殺害された女児の学校もこのパターンに当てはまる。 集団登校を実施しない学校もあるのはなぜか。事件のあった松戸市教委によると、5日から新学期が始まったものの、集団登校を行うような指示はしていないという。代わりに、午前8時から午前8時20分間に登校時間を限定することで、登校時に一人になるのを避ける「集中登校」を始めた学校があるという。市教委の担当者は「登校時の安全確保については各学校の実情に応じて、子どもが1人で歩く時間がないよう対策を取ってもらいたいとお願いした」と話す。 集団登校を義務付けない理由としては「通学路の道幅が狭く、集団で歩くのに向いていない地区もある。また、集団で歩くと前の人についていくだけになり、却って危ないという意見もある。地区によっては、住宅地ではないため周囲に一緒に登校できる児童がいないケースも考えられる」と説明する。 集団登下校は、2005年、広島市や栃木県今市市で相次いだ下校中に児童が連れ去られる事件を受けて導入した学校も多い。文部科学省が出した通知も事件を受けてのものだった。ただ、文部科学省は「安全を確保する有効な方法である一方、大事故を起こす危険もある」として、車が速度を出す道路や歩道が整備されていない場合には避けることが望ましいとしている。2012年4月には京都府亀岡市で集団登校の列に軽乗用車が突っ込み、3人が死亡、7人が負傷する事故が起き、また昨年10月には、横浜市港南区でも集団登校中の小学生の列に軽トラックが突っ込み、男児1人が死亡、7人が負傷した事故が起きている。 読売新聞が昨年3月に公表した都内の小学校についての調査結果でも、都内の公立小1277校のうち、集団登校をしているのは約2割の262校にとどまった。調査では、行わない理由について「集合場所での見守りなど、保護者の負担が大きい」(新宿区)「学校選択制のため、遠くから登校してくる児童がいる」(荒川区)など実施しにくい理由を挙げている。集団登校を行っていない学校や自治体には様々な考えがあることがうかがえる。