被災前の町ジオラマに 津波被害の珠洲・寺家 思い出のふるさと再現
能登半島地震で津波被害を受けた珠洲市三崎町寺家で、被災前の町並みをジオラマ模型で再現する「記憶の街ワークショップ」が30日までに始まった。神戸大や金大などで建築を学ぶ学生が、寺家を表現した全長5メートル、幅最大3メートルの大型模型に色を付けたり、住民の思い出を模型に落とし込んだりする。11月3日の最終日まで製作を続け、住民らと共に「思い出のふるさと」を作り上げる。 ワークショップは神戸大減災デザインセンターの槻橋(つきはし)修教授(建築学)が、東日本大震災の直後に被災地で始めた企画で、これまで東北を中心に約60回開いてきた。能登半島地震の被災地で初めてとなる今回の企画は、金大能登里山里海未来創造センターとの共催で行い、早大も含めた計22人の学生が携わる。 ジオラマの縮尺は500分の1。国土地理院の地形図や航空写真などを元に、500メートル四方の区画ごとに12個作成し、発泡スチロールで地形や建物を再現している。 会場となっている三崎町寺家の大浜集会所には、初日の28日から地区内外の住民が訪れた。ジオラマを見ながら地震前に岩のりが採れていた海岸の場所や、子どもの頃に遊んだ砂浜など思い出を語り合い、学生が記憶を記した小さな旗を立てた。 下出(しもで)地区の区長を務める出村正廣さん(77)は「地震で寺家の姿は変わったが、懐かしい昔の思い出を語り合えて楽しかった」と笑顔を見せた。製作に携わる神戸大大学院修士課程1年の泉貴広(あつひろ)さん(25)は「地元の方がふるさとについて話し合えるきっかけになればうれしい」と話した。