【#佐藤優のシン世界地図探索㊹】もし"トラ&プー"のシン世界が生まれたら...
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく! * * * ――「もしトラ」とは、もしもトランプが米国大統領に返り咲いたら、であります。プーとは確実に露大統領になるプーチン。この"トラプーの世界"になったら、情勢はどうなるのでしょうか? 佐藤 「もしトラ」が現実になると、短期的に国際情勢は安定します。なぜなら、トランプはバイデンのように、民主主義の価値観を振り回して世界のあっちこっち首を突っ込むようなことはしないからです。 おそらく、トランプは自分の支持基盤と自分の価値観の関係で、イスラエルだけを重点的に支援し、後は全部引くつもりでしょう。 ウクライナ戦争はは翌日にでも止めます。そして、もうひとつ手を引くべき案件として、台湾も入ってると思います。 ――台湾まで......。 佐藤 台湾が自治を守りたいのであれば、豊富な資金を使え、という論理です。 ――それは米軍に手伝って欲しいのなら、払うものを払えと? 佐藤 そういうことです。その意味でいえばトランプは日本に対して、防衛費の倍額どころか今の4倍は貢げ、と言ってくるでしょう。「嫌ならばアメリカは引くぞ」ということです。 ――20兆円支払わないとダメだと。これ、アメリカは「世界の警察」から「世界の傭兵」になるということですか? 佐藤 その通りです。だから、これまでの正義という価値観ではなく、ビジネスになるわけです。 ただし、アメリカが傭兵になるのはあくまで短期です。したがって、国際情勢は短期的に安定しますが、中長期的にはアメリカが作った空白をどう埋めるかが課題になるでしょう。私はこれをとりあえず『グローバルサウスの逆襲』とみています。 ――それは何ですか? 佐藤 これはここ10~20年の話ではなくて、500年前の話。かつてグローバルサウスを西洋が植民地化しましたが、それに逆行する流れが出てくるということです。そして、その中で起こるのは、「それぞれの国の文化を尊重しましょう」という価値観です。 特に争点となるのは、LGBTQ+です。これは「普遍的な価値観とは言えない」と主張してくるでしょう。基本的な家族が非常に重要であり、そこには男と女しかいないんだということです。 つまり、その間にあるLGBTQ+は伝統的家族制に反するとして認めません。個人の性の自己自認を中心とせず、家族というところからスタートして、家族という中間団体が基本単位になるということです。 そうした行き過ぎた個人主義の是正をする価値観の国同士が、ネットワークを作っていきます。トランプの思想に近いですよね。なので、そのような保守ネットワークを作るはずです。そして、そのネットワークをしっかり構築できるのは、おそらくプーチンだけです。 ――そして、世界はトラプーの世界になっていく...。 佐藤 ロシアがそのネットワークのハブのようになってくると思いますね。 ――トラさんとプーさんはお友達ですもんね。 佐藤 だから、そこはちゃんと棲み分けるわけです。 ――どう、棲み分けるのですか?