遊休農地解消へ ヨモギ拡大推進 福祉施設と連携も 新潟・JAえちご上越
新潟県のJAえちご上越は、地域に古くから伝わるヨモギの生産拡大に力を入れている。おきゅうや健康食品の原料として需要があり、「上越のヨモギは品質が良い」と供給が追い付かない状況だ。栽培方法を確立して省力化を図り、遊休農地の解消や農福連携にも挑戦。出荷者数、キロ平均単価ともに増加傾向にある。 JA管内では、食用の他、干した葉をもんで綿状にする「もぐさ」の原料などでヨモギ文化が残る。糸魚川市内には全国でも珍しいJA直営のヨモギの加工施設があり、もぐさを作り続ける。 2023年度のヨモギ出荷量は約3トン。24年度は77人が取り組む。根強い需要がある一方、生産者の高齢化が進み、出荷量の維持が課題となっていた。 解決に向け、同JAは21年5月、上越市で省力化に向けた栽培試験を実施。県上越農業普及指導センターの協力で、ヨモギの根元部分を圃場(ほじょう)にすき込んで株数を増やす「自生株増殖法」に取り組んだ。水田だった約1アールの遊休地に、約30キロを均一に散布。トラクターで浅くすき込んだ。 ヨモギはキク科で1節ごとに根があり、根元部分から新芽を出し繁殖する。順調に生育し、22年7月に初収穫を迎えた。定植を省けることから各地に広がり、上越市内では、4人と2法人が主に同方法で育てる。 出荷拡大へ、JAは23年に出荷者や事業者、自治体などとヨモギの発展に向けた意見交換会を開いた。今後、事業者が求める品質や規格に作る方法を研究する考えだ。各支店で開催した新規出荷者説明会では経営上の魅力を伝え、栽培を始める人も出てきた。 農福連携も生産拡大を後押しする。同市の柄山そば生産組合は23年度から、茎から葉を除く調製と乾燥の作業を地元の就労継続支援事業所に委託。併設する通所介護施設の利用者も加わり分担して取り組む。事業所の担当者は「みんなで一つの物を作り上げる達成感が生まれ、やりがいになっている。就労へのスキルアップにもつながる」と話す。 24年度の単価は、1キロ当たり800円超。ここ数年は80~200円増で推移する。JA営農部販売課の後藤直行課長補佐は「ハーブとしての利用や菓子の原料素材など、各方面から注目されている。中山間地の遊休農地の解消を目指したい」と期待する。
日本農業新聞