2024年6月頃予定の「定額減税4万円」、住宅ローン控除がある世帯は得しない?!
政府は物価上昇対策のひとつとして、ひとり当たり4万円(所得税3万円・住民税1万円)の定額減税を実施することを決定しました。 【図表】住宅ローン控除の概要「住宅ローン残高の0.7%を最大13年間、所得税から控除」 世帯ごとではなくひとり当たりの減税なので、扶養している人数が多いほど減税額も大きくなります。 物価高の影響がゼロになるわけではありませんが、家計への負担が少なくなることが期待されます。 しかし、住宅ローン控除を受けている世帯は、年末調整時に受けられる還付金が少なくなる可能性があるため注意が必要との声も聞かれます。 具体的にどのような事態が考えられるのでしょうか。 この記事では、定額減税4万円の概要や住宅ローン控除に与える影響などについて解説していきます。 ※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
所得税・住民税の定額減税の概要
所得税・住民税の定額減税とはどのような内容なのか、まずは制度の概要を確認しましょう。 当制度は、令和6年度の税制改正において、納税者をはじめその配偶者や扶養親族ひとりにつき、所得税3万円・住民税1万円の計4万円を減税するものです。例えば、夫・妻・子ども2人の4人家族で、妻と子どもが夫の扶養親族に該当する場合、ひとり4万円×4人で合計16万円の定額減税が受けられます。 制度が適用されるのは2024年6月からで、1年限定の措置とされていますが、今後の物価の上昇次第では追加的措置が講じられる可能性もあります。 また、当制度の対象者に所得制限を設けるかどうかも議論されていましたが、12月13日に2000万円超の世帯は対象外になることが決定されました。 高所得世帯は物価上昇の影響が比較的小さいだろうとの判断が、決定の理由とされたようです。
定額減税が住宅ローン控除に与える影響
解説したように、一見家計にとってメリットのある措置ですが、住宅ローン控除を受けている世帯にとっては、年末調整時に還付金として受けられる金額が減少してしまう可能性があります。 具体的にどのようなことなのか、まずは住宅ローン控除の仕組みをおさらいしておきましょう。 ●住宅ローン控除とは 住宅ローン控除とは 、住宅ローンを借りて住宅を新築・取得・増改築などをしたとき、年末時点のローン残高の0.7%を所得税から最大13年間控除できる制度です。もし所得税から控除しきれない場合は、翌年の住民税から控除できます。 利用できるのは、合計所得金額が2000万円以下であること、住宅ローンの借入期間が10年以上あることなどの一定条件を満たした場合です。 たとえば、2023年末時点に4000万円の住宅ローン残高がある場合、28万円(4000万円×0.7%)が住宅ローン控除として適用できます。 所得税が28万円以下であれば全額が控除され課税額は0円になり、控除しきれなかった分は住民税から控除できます。 ●定額減税が適用された場合 今回の定額減税が適用されると、所得税額や住民税額が減少するため住宅ローン控除できるものがなくなり、結果的に年末調整時の還付金が受けられない、または少なくなる可能性が出てきます。 以下の家庭の場合で、定額減税が適用されない場合とされる場合とで還付金にどのくらいの差が生じるのか比較してみましょう。 ・家族構成:夫・妻・子ども2人(妻と子どもは扶養親族) ・住宅ローン残高:4000万円 ・所得税:12万円 【適用されない場合(従来の場合)】 住宅ローン控除が28万円利用できる場合、所得税12万円が全額差し引けるので、所得税額は0円になり、年末調整で12万円が還付されます。 住宅ローン控除はまだ16万円余っているので住民税からも差し引けますが、住民税の控除限度額は「前年度課税所得×5%、最大9万7500円まで」です。 【適用される場合(2024年6月~)】 定額減税が適用されると、納税者(夫)と扶養親族3名の合計4名分で所得税が12万円(3万円×4人)減税されることになります。もともとの所得税額は12万円なので12万円の減税を受けると税額は0円です。 住宅ローン控除は28万円適用できますが、定額減税により所得税が0円になっています。適用できる分がないため年末調整で還付を受けられるものがなく、結果として住宅ローン控除がむだになってしまうのです。 この住宅ローン控除による恩恵を受けられない分について、どのような扱いになるのかは現時点で未定です。住宅ローン控除を受けている世帯は子育て世代も多いことから、給付など経済的負担を軽減するような措置が取られることを期待したいところです。