川田利明「ラーメン屋はあと5年で20周年だが、多分それまで続かない。『やめないで』と言う人ほど店には来てくれない」
「プロレス四天王」の一人として活躍した川田利明さんは現在、東京都・世田谷区のラーメン屋「麺ジャラスK」の店主です。「開業から3年以内に8割が潰れる」ともいわれる厳しいラーメン業界で経営を続け、2024年6月で開店から15年目を迎えました。しかし川田さんは、「ラーメン屋は絶対にやらないほうがいい」と語っていて――。今回は、川田さんの著書『プロレスラー、ラーメン屋経営で地獄を見る』から一部引用、再編集してお届けします。 【写真】リングで技を決めるプロレスラー・川田利明さん * * * * * * * ◆逆風ばかりの14年間 思えば、俺にはいつも逆風が吹いている。 最近も、店の横に借りていた駐車場3台分のうち1台分を大家さんに返したけれど、駐車場代はなぜか5分の1しか安くならなかった。 店を始めた時もそうだった。 最初はいろんなことがうまく回らないだろうから宣伝をしないでひっそりとプレオープンさせて、ルーティーンを決めて、落ち着いてから正式なオープンにしたかった。 ところが高木三四郎がネットにフライングで「麺ジャラスK」のことを書いてしまったから、お客さんがたくさん来てテンヤワンヤな状態になってしまった。 それでもオープンしてから1年くらいはお客さんが次々と来てくれて、お金がかかる食材もバシバシ仕入れていた。 最初は車とか貯金とか、資産があったから運転資金につぎ込んでいけた。 ところが、オープンから1年も経たない2011年3月に東日本大震災が起きた。 当日は店の前の世田谷通りに、歩いて自宅へ帰ろうとする人たちがたくさんいて、「水を分けてくれませんか?」「携帯電話、充電させてくれませんか?」と“避難所”になっていたことを思い出す。もちろんその後、お客さんの数は激減した。 3年くらいかけて売り上げをオープン当初の5割まで戻し、2015年頃には7割くらいまで回復することができた。
◆飲食店の運転資金 俺はこの店に関して大きな借金をしたことはない。でも、持てる資産は次々に運転資金につぎ込んでいかなければいけなかった。 厨房機器は割賦で支払っていたけれど、払い終わった頃に壊れるもの。月々のメンテナンス料も高い。飲食店は固定費が予想以上にかかる。 飲食店でいちばんいい働きをしてくれるのは券売機と食洗機だけど、券売機は500円硬貨が刷新されるたびに付属の機械を交換しなければいけない。 2024年の7月には新札が出るから券売機も現状では使えなくなる。この券売機だって軽自動車1台が買える値段だからね。 他のラーメン屋ではカウンターに置けるような小さな券売機が目立つようになったけれど、あれだって安いといっても、おそらく50万~60万円はするだろう。 以前は2カ月に一度は店でイベントを開いていた。だが、新型コロナの感染拡大が始まってからそれもできなくなった。 定員20人のイベントでもチケットが売れ残ったことはなかったんだけどね。 最近はトークイベントなどに呼んでもらえる機会が増えた。そのギャラで店の赤字を埋めている状態だ。