オペラ座に新黄金時代の到来の予感、期待のマルク・モローの魅せるバレエが必見だ。
新エトワールと芸術監督がもたらす、パリ・オペラ座の新しい風
昨年12月に就任したジョゼ・マルティネス芸術監督が、早々と3名のエトワールを任命。若手の登用も積極的に行う監督のもと、フレッシュな活気が漲り、オペラ座に新黄金時代の到来の予感が。 今年24歳のオペラ座ダンサー。シャネルやナイキなどとの仕事に加え、バレエのある彼女。一体どうやってバランスを保っているんですか…? 《マルク・モロー|Marc Moreau》 1986年、大西洋岸のロワイヨンに生まれる。98年からパリ・オペラ座バレエ学校に学び、2004年に入団。カドリーユ時代にバンジャマン・ミルピエの『Triade』の創作に参加する。09年にコリフェ に上がり、翌年AROP(パリ・オペラ座振興会)賞を受賞。11年にスジェ、19年にプルミエ・ダンスールに昇級し、23年3月2日、公演「ジョージ・バランシン」で『バレエ・アンペリアル』を踊りエトワールに任命された。 オペラ・ガルニエのステージで公開クラスレッスンが行われた際、控えめに目立たぬ場所にいながらも、背筋がすっと伸び、とてもノーブルなバーレッスンで光を放っているダンサーがいた。マルク・モローだ。エトワールの品格とはこれか、と唸らせる瞬間だった。 3月2日のエトワール任命はマルクにとっては驚きそのものだったが、リハーサルスタジオでの彼の熱心な仕事ぶり、舞台の出来栄えを確認していた芸術監督には当然のことだったのだ。
「36歳を迎えてから、任命への期待が自分の中で薄くなっていました。プルミエ・ダンスールとして踊りたい作品に配役されているんだから、いいさ!と満足し、日々の仕事にシリアスに根気強く取り組んでいて……。この任命にはカンパニーの団員全員への『何事も諦めるな、エトワールの可能性があるのだ』という希望のメッセージが込められていますね。任命の晩、僕のこれまでの仕事が認められたことを誇らしく感じ、支えてくれた家族やコーチたちのことを思いました。目標にいたるという使命を果たし、ある種、肩の荷を下ろせた気持ちもありました」 任命の喜びの涙の裏を語る彼。カドリーユ時代にバンジャマン・ミルピエに見いだされ、彼の作品に重用される一方、けがで1年の休業があり辞めることも考えた時期がある。今日にいたるまで起伏に満ちた長い道のりだっただけに、褒美の味わいは格別だ!と顔をほころばせた。任命の瞬間をともにしたオニール八菜、任命後『さすらう若者の歌』で共演したギヨーム・ディオップ。彼らと強い絆で結ばれていると感じ、自分たち3名を〝エトワール・マルティネス”と表現した。