「がんばりも想いも伝わらない…」泣き言をこぼしたくなる日のシンママに「メダルクッキー」
母子家庭の収入は父子家庭の約半分
令和3年度全国ひとり親世帯等調査によると、日本のひとり親世帯は134.4万世帯。うち、母子家庭は119.5万世帯である。 【漫画を読む】毎日お迎えは最後。仕事に家事に忙しいシンママに口達者な娘のみのるは 平均年収は、母子世帯272万円、父子518万。 母子家庭の収入が父子家庭の約半分というのは、「正規の職員・従業員」のシングルマザーの割合が、シングルファーザーの約7割という数字に比べて、圧倒的に少ない48.8%だからだろう。 反対に「パート・アルバイト等」は、シングルファーザーの4.9%に対し、シングルマザーは38.8%。母子家庭のママさんは、不安定な働き方にならざるえない実情がある。 先月発売された『星のみえない夜は砂糖菓子につつまれて』(まつざきしおり 著 / オーバーラップ)は、人知れずがんばっても、なかなか報われない8人の主人公を、甘く優しいお菓子で癒す漫画とレシピのエッセイ集。 本書の第6話「北極星のメダルクッキー」に登場するのは、娘のために必死に働く、36歳のシングルマザー 北野ひかるだ。 仕事も家事も山のようにあり、保育園のお迎えは毎晩のように「最後」。 それだけ必死に仕事をしても、娘と帰り途中には、まだ先だったはずの仕事の催促の連絡がくる。 「この子を寝かしてから、やろう」 ワーキングマザーなら、誰しもが一度は頭に浮かぶ言葉である。 早くごはんを食べさせ、スムーズに風呂に入れ、さっさと寝かせたい。なのに、そういう時に限って、いつも以上に子どもがぐずったり、わがままを言いだしたりするのはなぜだろう。
「なんでうまくいかないのか」
ひかるもまた、張り付けた笑顔で子どもに読み聞かせしながら、心の中では「はやく、ねろ~」と念仏を唱える。 一方のみのるは突然何を思い出したか、「編み込みをして」などと言い出す。 もう寝付くと思った、このタイミングで、編み込みだと? ひかるが遠回しに拒否しようとする気持ちには、おおいに共感できる。 著者のまつざきしおりさんの描くこうした日常は、子育てアルアル、リアルすぎるのだ。 だがみのるは怒りだす。 「みのるにはいろいろやりなさいいうのに、かーちゃんはぜんぜん、なにもしてくれない!!」 痛いところをつかれたかーちゃん、ひかるは、思わずイラっとしてしまうが、こうしたとっさの反応にもまた、共感してしまうのだ。 「かーちゃんなんて、だいっきらい」 愛娘にそう言われ、傷つくひかる。なんでうまくできないのか。なんでうまくいかないのか。そんなひかるのもとにやってきたのが、喫茶星屑の店主と大きな猫。 不信感丸出しのひかるに「北極星のメダルクッキー」のレシピを渡す。 文句を言いながらも、ひかるは言われたとおりにクッキーを作り始めた。やがてオーブンから、甘く、香ばしい香りが漂い始める。 焼きたての、ほんのり温かい、さくさくの星型クッキーを味見する3人。 できあがった星型のクッキーをバスケットにつめて、星空観察に出たひかるは、きらきらした北極星の光が実は430光年前のものと知る。 そして、時間はかかっても、「いつか必ず届く」体験に勇気づけられるのだった。 ◇「がんばってるかーちゃん」と認められたひかる。子どもが親に褒められると嬉しいように、実は親だって子どもに認められるのは、すごくうれしいことなのだ。
まつざき しおり、FRaU マンガ部