『マル秘の密子さん』福原遥が見せた人間らしい表情 清水尋也が地味な役から変身を遂げる
トータルコーディネーター・密子(福原遥)のサポートを受け、同族経営の大企業「九条開発」の次期社長に立候補したシングルマザーの夏(松雪泰子)。密子は一体、何者なのか。彼女の本当の狙いは? 『マル秘の密子さん』(日本テレビ系)第2話は、早くもその答えに一歩近づく回だった。 【写真】遥人(上杉柊平)の頬を触る密子(福原遥) 前社長・謙一(神保悟志)のヘルパーに過ぎなかった夏の突然の立候補により、次期社長の決定は1ヶ月先送りに。本来ならば、新社長に就任するはずだった謙一の長男である遥人(上杉柊平)は早速、夏の排除に取りかかる。彼がまず目をつけたのは、夏の息子・智(清水尋也)。もともと智は日雇いのバイト生活を送っていたが、夏に命を救われた謙一の好意で九条開発の総務部で契約社員として雇われていた。 この第2話で明らかになったのは、遥人の味方の多さだ。役員たちはもちろんのこと、母である美樹(渡辺真起子)も長女の玲香(志田彩良)ではなく遥人に社長を任せたいと思っている。また、美樹と何やらただならぬ関係性を匂わせる秘書室長の坂東(黒羽麻璃央)も遥人の手となり足となり、会社で暗躍していた。 智が所属する総務部にも遥人の息がかかった社員がおり、それが九条家の遠縁にあたる上司の森山(小久保寿人)。彼は夏の息子と分かるや否や、智に時代錯誤なパワハラを働き、社内の“墓場”と呼ばれる地下倉庫に追いやる。さらには総務部が管理している過去10年分の都市開発のデータが消えたとして、その責任を智になすりつけるのだった。 どこに行ってもなるべく波風を立てず、平穏な人生を送ってきた智。大企業の社長になるという無謀な挑戦に打って出た夏のことを恥ずかしいとすら思っていた。そんな智に密子が勧めるのは、“死の疑似体験”だ。棺桶に見立てたダンボールの中で死んだつもりになり、自分の心の声に耳を澄ます。すると、これまで「これでいい」と納得していたはずの人生が途端につまらなく思えてきた。人はいつか必ず死ぬ。だったら周りに身の程知らずだと言われても、恥だと思われても、やりたいことをやった方が絶対にいい。幸運なことに智はまだ生きているうちにそう思うことができた。 ダメ押しは、密子の「あなたが変われば、世界は変わる」という言葉。前回、夏のことを動かしたこの言葉は何てことのない、使い古されたフレーズだ。けれど、密子が使うと、自然と足が動き出してしまう不思議な力を持つ。智もまたこの言葉に動かされ、「今回の件は指示した上司にも責任はある」「僕とあなたの2人で責任を取りましょう」と森山に直訴した。森山はその勢いに気圧され、遥人から見放されてしまう。 密子は前回、夏の外見から内面を変えたが、智の場合は内面から外見を変えた。大きくビジュアルが変化したわけではないが、目にかかるほど長かった前髪を上げただけで随分と明るく見える。連続テレビ小説『おかえりモネ』(NHK総合)でも普段はおかっぱ頭にメガネ姿の冴えない気象予報士だが、高校時代にモデル経験があり、スーツを着た途端に印象がガラリと変わる役を演じた清水。自身もモデルとして活動しており、身長186cmの華やかなビジュアルながら、地味な役にもなりきれる彼はまさに変身させがえのある素材と言えるだろう。夏を応援すると決めた智の今後のさらなる変化も楽しみだ。 そしてもう一つ注目したいのが、密子の過去。彼女は遥人の妨害にも動じず、どんな時でも笑顔を絶やさない。自分の素性を嗅ぎ回る秘書・千秋(桜井日奈子)の弱みを握り、スパイとして操る姿は悪魔にも見える。そんな彼女が唯一、人間らしい表情を見せたのは、智が倉庫に眠っていた謙一の秘書のパソコンを見つけ出した時。いつもの仮面が剥がれ、密子の表情には動揺の色が浮かぶ。謙一の秘書は火事に巻き込まれ、命を落としていた。死の疑似体験で密子が思い浮かべたかき氷を一緒に食べる女の子は、もしかしたらその秘書なのかもしれない。だとしたら、彼女の本当の目的は謙一のプロジェクトを破滅させるために、火事を故意に起こした可能性のある九条家への復讐なのだろうか。
苫とり子