謙虚な若きエトワール。初のアフリカ系エトワールが力強くもロマンティックなのには理由がある。ギヨーム・ディオップってどんな人なの?
昨年12月に就任したジョゼ・マルティネス芸術監督が、早々と3名のエトワールを任命。若手の登用も積極的に行う監督のもと、フレッシュな活気が漲り、オペラ座に新黄金時代の到来の予感が。 【写真】お待たせいたしました!? ついにギヨーム・ディオップが飛び級でエトワールに。新体制に注目が集まる 《ギヨーム・ディオップ|Guillaume Diop》 パリ生まれ。コンセルヴァトワールを経て、2012年からパリ・オペラ座バレエ学校で学ぶ。18年に入団。21年、将来有望なダンサーに授けられるカルポー賞とAROP賞を受賞する。22年コリフェ、23年スジェに昇級。3月11日、けがで降板したユーゴ・マルシャンに代わって参加した韓国ソウルでのツアー中、LGアーツセンターにて『ジゼル』のアルブレヒト役を踊り、プルミエ・ダンスールを飛び級してエトワールに任命された。 「任命の瞬間、自分の仕事が認められたことに、思っていた以上に感動があって……あれほど泣いてしまうなんて思いもしなかった」 3月11日をこう振り返るギヨーム・ディオップ。その涙は安堵からで、「主役を踊れる機会があってもまだスジェなのだから、何かあったらある日突然それが終わってしまうこともあるんだと思っていたから」と。 大きなリスクを背負い彼をプッシュしていたのはオーレリー・デュポン前芸術監督だったので、彼女以外の監督から任命されたことによってオペラ座のダンサーとしての正当性が得られたと強く感じられた、と語る彼。任命以前、カンパニーにとって歓迎すべき素晴らしいジョゼの就任でも、自分にはどうなのだろうと実はひとり不安を抱えていたそうだ。
フランス人の母とセネガル人の父を持つ彼。ふたつの国のおかげで文化的にも豊かになれると語り、この長い脚は父のおかげ!と笑う。父からは褐色の肌も受け継いでいて、バレエ学校時代は、ダンス界での自分の未来にそれが不安や疑問を呈することとなった。 「オペラ座の学校時代、以前からのダンス教師の勧めでニューヨークのアルビン・エイリーのところに研修に行きました。肌の色はダンサーにとってバリアではないんだと確信するためだった。ここに行ったことで、自分はダンスで生きていける、と強く感じることができました。大切なのは仕事に打ち込み、踊る喜びを保ち、前進のために疑問を常に持ち続けること。今回の僕の任命が、夢の実現に肌の色はブレーキではない!というメッセージになったのであれば幸せです」