〈EV販売失速は本当か?〉日本のメディアが見逃している真実、データから見る世界のEV販売の現状
ここ数カ月の間、電気自動車(EV)に関する報道が多くあった。「EV販売失速」、「ハイブリッド一人勝ち」、「EV値下げ競争」などEVの販売不調を告げるものが大半だ。自動車メーカーが想定していた将来のEV生産台数を下方修正、あるいは投資先送りとのニュースもあった。 報道の背景には裏付けになるデータがあるのだが、データをよく見ると、補助金の廃止など特殊な事情のある国を除けば、EVの販売増加のスピードは落ちているものの、主要市場の中国、米国、欧州では対前年度比の数量を見る限り販売台数増は続いている。 2月の販売低迷の原因は、EV販売の6割を占める最大市場中国の春節だ。例年1月と2月は春節の休みの影響で中国での販売が低迷し、世界の販売台数とEVのシェアに大きな影響を与える。 ハイブリッド一人勝ちも、少しオーバーな表現だ。ハイブリッドの販売台数が増加しているのは事実だが、EVの販売増を多少上回るペースというだけだ。 EV販売価格の値下げも今に始まったことではなく、米国では1年以上前から続いている。中国でも最大手BYDが値下げをしている一方、欧州市場では平均のEV価格は値上がりしていると言われている。メーカーは市場と競合の様子を見ながら値付けしているのだろう。 EVの生産・販売に前のめりになっていた欧米のメーカーの中には、EV生産スケジュールを見直す動きがあるが、世界中の車が一度にEVになるはずはないという現実に則した動きだ。欧米メーカーもようやく日本のメーカーの考えに近づいてきたのだろう。 いまEVの世界で起こっていることをデータから見てみよう。
補助金が左右したドイツのEV販売
昨年12月16日、ドイツ政府はEV補助金の打ち切りを突然発表した。発表時点で申請を受付け済みのEVまでが交付対象になった。 車種により異なる補助金は3000ユーロから4500ユーロ(約50万から75万円)。販売に大きな影響を与える額の打ち切りだったので、一部メーカーは補助金額の負担を発表する騒ぎになった。 打ち切りの理由は予算の枯渇だ。連邦政府はコロナ禍対策の未使用予算約600億ユーロ(約10兆円)を気候変動・エネルギー転換事業などに流用したが、11月に連邦憲法裁判所が違憲と判断したため、政府は予算削減を強いられた。 22年の年末にも補助金額の引き下げがあり、23年1月のEV登録台数が前月の10万4300台から1万8300台に8割以上落ち込んだ。前回と異なるのは突然の打ち切りであり駆け込み需要がなかったことだが、メーカーの補助金肩代わりが功を奏したのか、販売台数の落ち込みは少なかった。 今年1月と2月のドイツのBEV(バッテリー稼働)、PHEV(プラグインハイブリッド)、HV(ハイブリッド)、ガソリン、ディーゼル車の登録台数は図-1の通りだ。BEV、PHEVのシェアは、前年同期との比較で13.1%から11.6%、5.4%から6.7%と合計で0.2%の下落だ。HVのシェアは23.8%から24.8%にわずかに伸びている。