Wi-Fiに代わる新規格「Matter」がスマート家電の“革命”に(多賀一晃/生活家電.com)
【家電のことはオイラに聞いて!】#64 最近のIoT(インターネットにつながるモノ)家電には「Matter(以下マター)規格準拠」と書かれているものがあります。新しく決まったスマートホームの標準規格です。家電IoTの規格と言った方がわかりやすいでしょうか。家電のIoTは、現在Wi-Fi、Bluetooth接続で行われています。問題がないように見えますが、どうしてマターという規格が決められ導入されたのでしょう? 楽天は2026年にサービス開始…「衛星との直接通信」で気になる8つの疑問 Wi-FiはIoTが提唱される15年ほど前に導入された通信規格です。使用開始は1997年。PCが一気にビジネスに入り込んだのはウィンドウズ95や98が理由ですから、ほぼ同時期です。 Wi-Fiのポイントは2つ。1つは通信速度が速いこと。このため、動画、大容量静止画が当たり前になった現代でも使われています。もう1つは認証制度。「Wi-Fiロゴ」が付いているデバイスは、異なるメーカーであっても、相互接続が可能です。 欠点は、障害物、電波干渉によって不安定になることです。一軒家の場合、1階はOKなのに、2階はダメなこともあります。また、電力も結構消費します。 家電のIoTで必要なのは、スマートな相互間認証と確実な接続。送受信データは大きい必要はない。そして電気代は安く、最新のセキュリティーで守られること。これらを総合すると、Wi-Fiは家電用として理想的な通信手段とは言えません。 これらの問題をクリアしたのがマターなのです。 例えばWi-Fi接続だと、グーグル、アマゾン、アップル各社の音声アシスタントに個別対応しなければなりません。ですが、マターは個別に対応する必要がない。消費者は今後、家電購入の際にどの音声アシスタントが使われているのか意識せずに済むようになります。 私の知人が、この夏プリンターの買い替えでとても悩みました。孫のために、アマゾンのAlexa(アレクサ)にセットされている数独をプリントアウトしていたのですが、Alexa対応のプリンターが少なくなっていたからです。これがマターの時代になれば、グーグルの音声アシスタントにつながるモデルならば、Alexaでも使えるのです。彼のような悩みはなくなるのです。 ■グローバル企業が200社以上参加 マター規格には、アマゾン、グーグル、アップル、IKEAなどそうそうたるグローバル企業が200社以上参加しています。今後、業界標準になるのはもちろん、アマゾン、アップル、グーグルなどアプリに強い影響力を持つ会社が、スマートホームを強く意識した総合的な家電連動アプリを作る可能性もあるのです。 連動アプリがあれば、最寄りの駅に着くとスマホから自動的に指示が行き、自宅のエアコンがスタート。ドア前でスマートロックが錠前を自動解除。家に入れば照明が自動点灯。音楽もリラックスムードのボサノバがかかる、なんてこともできます。しかも、異なったメーカーの家電で、です。 IoTが発案されてほぼ10年。発案時に思い描かれた生活がいよいよ実現しそうです。 (多賀一晃/生活家電.com主宰)