【日経新春杯回顧】去りゆく師に捧ぐ重賞V スタミナ色濃いブローザホーンが才能開花
今春引退の中野栄治師へ捧ぐ
愛知杯の安田隆行厩舎に続き、日経新春杯も中野栄治厩舎のブローザホーンが勝利。今春解散する厩舎の馬が重賞を勝った。毎年、2月ぐらいから解散予定の厩舎が活躍する傾向があるが、今年は少し早い。来週からの馬券作戦に取り入れていこう。なお、上記2厩舎のほかに、飯田雄三、加用正、高橋裕、小桧山悟、松永昌博厩舎が解散する。参考にしてほしい。 【日経新春杯2024 推奨馬】極上の末脚が京都コースで炸裂する! SPAIA編集部の推奨馬を紹介(SPAIA) 中野栄治調教師といえば、アイネスフウジン。東京競馬場に詰めかけた19万人の中野コールは平成はじめの競馬史には欠かせない名場面だ。調教師転身後はトロットスターだろう。2001年春秋スプリントGⅠ完全制覇を決めたダミスター産駒。スプリンターズS1:07.0は衝撃的な記録だった。安田記念大敗からの直行ローテ、馬体重+24キロは当時としては異例の勝利といっていい。直行ローテの草分け的存在でもある。 ブローザホーンの勝利は19年カイザーメランジェ以来となる4年半ぶりの重賞勝利となった。重賞7勝のうち、01年フラワーC・タイムフェアレディの1800mが最長距離で、古馬の中距離重賞はこれが初でもある。やっぱり中野栄治調教師には芝2400mが似合う。 ブローザホーンの母オートクレールは息子と同じ岡田牧雄氏が所有し、中野栄治厩舎に預けられた。初勝利は3歳9月、13戦目と遅く、2勝目は1年10カ月後の5歳夏とさらに時間がかかった。その年の秋から次第に成績が安定し、6歳秋にオープン入り。4年以上かけ、4勝。中野栄治調教師と岡田牧雄氏の辛抱強さが花開かせた。時計も舞台も問わずマイル戦で活躍したオートクレールは岡田スタッドで繁殖入り。そしてブローザホーンが誕生し、中野栄治厩舎ゆかりの血が師の引退に花を添えた。競馬における血のドラマは人馬によって紡がれる。そんなエピソードとして心に刻んで欲しい。
父と母から注がれた成長力
遅咲きのオートクレールに配合されたのがエピファネイア。産駒からエフフォーリアやデアリングタクトが現れ、クラシックでの活躍に期待がかかるものの、自身は菊花賞やジャパンCなどで遅れて咲いた大物でもあった。3歳春に惜敗を続け、秋から翌年にかけて大成するのはその父シンボリクリスエス譲りでもある。この血はひとたび開花すると、手がつけられない。 オートクレールの父はデュランダル。サンデーサイレンス×ノーザンテーストの代表格でもある同馬も4歳秋に本格化をとげ、翌年秋までのGⅠを1→1→2→2→1着と極上の切れ味でファンを酔わせた。ブローザホーンに注がれる成長の血を思えば、この勝利はきっかけにすぎない。5歳シーズンこそ、飛躍のときではないか。母系からマイルに強い血、父系から中長距離の血を獲得しており、総合力がある。 レースはシンリョクカが外から突っかけ、序盤600mが33.7と入りが速く、中盤で落ち着くも、前半1000m通過が58.3とタフな流れだった。後半800mは11.9-12.1-12.0-12.3と極端に速くならなかった。京都の馬場コンディションも相まって、全体的に底力を問う流れ。上がり最速で差し切ったブローザホーンにはスタミナを感じる。軽い競馬にならなければ、再び出番があるだろう。馬体重は12キロ増えても426キロだが、得てしてスタミナに特化したタイプは小さい。春の京都でその走りをみたくなった。