10戸に2戸が無人、「空き家率」ランキング全国首位 ゴーストタウン化する和歌山の苦悩
国は「適切な管理が行われていない空き家などが防災、衛生、景観などの生活環境に深刻な影響を及ぼしている」として平成27年に空き家対策特別措置法を施行。これによって市町村による空き家への立ち入り調査や解体撤去の指導・助言などが可能となった。
和歌山県南部の中心都市・田辺市。空き家対策を担当する市建築課の浜本栄二企画員は「空き家が増えるのは仕方ないが、放置されて老朽化した空き家が増えるのは問題」と話す。
同市は29年度、倒壊の恐れがある危険な空き家の解体撤去費に最大50万円を補助する制度を創設。さらに同年度、空き家の所有者に解体撤去と土地の売却を、隣人らにその土地の購入を提案する「隣地売却斡旋(あっせん)制度」を開始した。この斡旋制度は全国でも珍しい取り組みで、各地の地方議会の議員らが視察に訪れているという。
斡旋制度が成り立つのは解体したい所有者、倒壊すれば自宅が被害を受ける隣人ら双方にメリットがあるためだ。空き家所有者は遠方にいる高齢者で経済的に余裕がないことが多く、隣人らへの売却代金などで解体撤去するよう市が提案。隣人らには、解体撤去費や登記手続き費の額で土地を購入できると提案する。隣人らの購入費用は危険な空き家であれば解体撤去補助金の額が差し引かれるためさらに安くなり、駐車場などに活用しているという。
同市によると、平成30年度、市内には1760件の空き家があったが、これらの取り組みなどで約400件を解体撤去。危険な空き家はほぼなくなったという。
ただ市は今後も年に400~500件程度が新たに空き家となる可能性があると予想する。これらが放置されれば危険な空き家となってしまう。そこで市は空き家を放置せずに活用するため、民間業者と協力する体制構築に動き出した。リフォームを担う工務店や不動産売買を行う宅建業者、相続手続きをする司法書士などを登録し、所有者の意向に沿う形で活用策を検討する。