「性病」は無症状が多いことをご存じですか? 前兆や早期発見の重要性も医師が解説
「自分には関係ない」「自分だけは大丈夫」、性病に対してこんな風に考えている人も多いのではないでしょうか。じつは、全く症状がなくても性病に感染していることもあることをご存じですか? 今回は、性病を早期発見する重要性について、「性感染症内科ペアライフクリニック横浜院」の永井先生に詳しく教えていただきました。 【イラスト解説】「性病」はサウナ・公衆トイレでもうつる? “意外な感染経路”とは
性病は感染していても無症状?
編集部: 性病に感染すると、どのような症状が出るのですか? 永井先生: 症状は疾患によってそれぞれ異なります。例えば、国内で近年急増している「梅毒」は、しこりやただれといった症状が出現しますが、痛みやかゆみなどの症状はみられません。しかし一方で、「淋病(淋菌)」や「性器クラミジア感染症」では、男性なら排尿時痛や尿道からの膿、女性ならおりものの異常や不正出血がみられます。 編集部: 必ずなんらかの症状がみられるのですか? 永井先生: いいえ、必ずしもそうとは限りません。性病の多くは自覚症状に乏しいため、気づかないうちにパートナーへ感染させてしまうことも少なくないのです。 編集部: 無症状の場合もあるのですね。 永井先生: はい。そのほか、梅毒のように、しこりやただれなどの症状が出現しても、痛みやかゆみなどの症状がなければ気づかないこともあります。したがって、少しでも違和感を覚えたら性病科や性感染症内科、泌尿器科、婦人科などの性病を診察してくれる医療機関を受診しましょう。 編集部: 症状に気づかず、見逃してしまうこともあるのですね。 永井先生: そのとおりです。ほかにも、いつの間にか症状が消えてしまうこともあります。そのため、「様子を見ていたら治っていた」と話す患者さんも多いのですが、それは治ったのではなくただ症状が消えただけです。症状が消えたと思っても安心せず、必ず受診することをおすすめします。また、定期的なセルフチェックも必要です。
性病の患者数はこんなに多い
編集部: 最近、性病の患者数が増えていると聞きました。 永井先生: 最近、急増しているのは梅毒です。厚生労働省の発表によると、2021年以降大きく増えており、特に20~50代の男性、20代の女性で目立っています。 編集部: なぜ、梅毒の患者数が急増しているのですか? 永井先生: 様々な原因が考えられますが、性風俗の従事歴や利用歴が関係していると考えられます。また、SNSやマッチングアプリなどを介して、性行為のハードルが下がったことも関係しているのではないかと考えられています。 編集部: そのほか、性病患者の急増に関係していると思われることはありますか? 永井先生: 臨床をおこなう上での個人的な見解ですが、「特に若い人を中心に、コンドームの使用率が低下しているのではないか」と考察しています。 編集部: なぜ、梅毒の患者数増加が判明したのでしょうか? 永井先生: 梅毒は、保健所への届出が義務づけられている疾患です。医師は、患者さんが梅毒であることが検査で判明した場合には、保健所へ届出をしなければなりません。こうした背景から「梅毒が増えている」とメディアで騒がれた結果、「もしかしたら自分も梅毒かもしれない」と心配になって検査を受けにきた人が増え、結果的に梅毒が見つかって患者数が増加したのではないかと考えられます。 編集部: ということは、潜在的な患者数はもっと多いということですか? 永井先生: そのように考えられます。症状が出ても気づいていない、あるいは性病を疑っていない場合には、検査すら受けていないかもしれません。そのような人が梅毒である可能性を含めると、実際の患者数はもっと多くなるのではないかと予測されます。