このポルシェ、格好良すぎる! ポーランドの漁村で生まれた“波乗り専用”ポルシェ 928
「ポルシェ好きのサーファー」なら、日本にも少なからずいるだろう。 ただ、砂浜を疾走できるクラシック・ポルシェを作ったサーファーは、タデウシュ・エルワルトくらいかもしれない。 ▶︎すべての写真を見る
バルト海へ突き出るように伸びる砂州(ヘル半島)にあるポーランドの小さな漁村、ハウピ(Chałupy)。タデウシュは父とともにこの村でキャンプ場とウォータービジネスをはじめた。 ふたりの努力もあり、美しい砂浜にはシーズンともなればサーフィンやウインドサーフィン、カイトサーフィン、カヤックなどを楽しむために多くの人々が集うようになった。
ポルシェ 928の“サーフタクシー”
当然、彼自身も波に乗ることが大好きだが、同時にポルシェも愛していた。 外の世界を遮断するように海が周囲を囲む小さな村で、幼い頃からガレージに父のポルシェがあったら、その世界に引き込まれるのは避けようのない宿命だろう。 毎日のように海とガレージに佇むポルシェ928を眺めていた、キャンプ場のマネージャーでもあるこの若者は、あるアイデアを思いついた。 ビッグウェーブが来たらすぐビーチまでお客を(ときに自分も)送り届ける“サーフタクシー” があれば面白い、と。
とはいえ、ギアボックスやディファレンシャル、サスペンション等をどう調整すればよいか。メーカーであるポルシェでさえ、最近ようやくオフロードも走れる911(911ダカール)をリリースできたほど、砂浜を走れるクーペを作るのは難しい。 ましてや約20年も前に生産が終了している928をポーランドの片田舎で、どうやればサーフタクシー化できるのか。 救いを求めて彼が声をかけたのは、天才エンジニアでありラリードライバーでもあるトマシュ・スタニシェフスキだ。トマシュはちょうど自作のポルシェ924でクラシック・ダカール・ラリーを完走したばかりだった。
928と924は、911と違ってともにフロントにエンジンを置いて後輪を駆動させるFRレイアウト。とはいっても、サスペンション形式も違えばエンジンも異なる(924は直列4気筒、928はV型8気筒)。 天才トマシュをもってしても、928のサーフタクシー化は困難を極めたという。それでも彼は、「サーフィン魂を宿した928」を作るための解決策を見つけていった。 こうして出来上がった「928 サーファリ(Surfari)」。初お披露目の場は、数年前に自ら主催して始まった地元のイベント「ヘルライダーズフェスティバル」だった。