自分の感情を許す重要性。無意識の偏見から生まれる小さな攻撃「マイクロアグレッション」
無自覚の偏見によって、私たちは日常のなかで他人から悪意なく傷つけられたり、反対に傷つけていることがある。そんなマイクロアグレッションという言葉を知り、気付くためのヒントを学ぼう。エル・ジャポン2023年12月号より。
マイクロアグレッションについての著書が話題の小児精神科医、内田 舞さんに、その向き合い方を聞いた。
《PROFILE》 内田 舞…小児精神科医、ハーバード大学医学部准教授、マサチューセッツ総合病院小児うつ病センター長、3児の母。三男を妊娠中に新型コロナワクチンを接種した体験などを発信している。
被害に遭ったらまずは『悲しい』と感じる自分を許してあげること
自身が妊娠中のコロナ禍に、妊婦のワクチン接種啓発のための投稿をした小児精神科医の内田 舞さん。モヤモヤしたのは支持者からの「最初はいわゆる『勝ち組女性』の意見かと疑っていた」というコメントだ。いわゆる“勝ち組女性”はなぜ信用してもらえないのか? これこそがマイクロアグレッション(日常の中の何げない言動に表れる、偏見や差別に基づいた見下しや侮辱、否定的な態度)だ。 「マイクロアグレッションは“小さな攻撃”と訳されますが、社会の中でのマクロな差別と直接的につながっていて、個人の心に与える悪影響は大きいのです。
感情を封じ込めずに感じた自分を認めてあげる
「よく経験する人はその不快感がわかるけれど、そうでない人には理解されない。たとえばよく『怖い、怒ってる』と言われるフェミニストも、男性には無縁の小さな侮辱を日常的に経験していて、怒らずにいられない。日本では『女性は波風立てず従順であるべき』と刷り込まれているので、嫌な思いをしても『何を言っても変わらない』とあきらめたり、『そう感じる自分が悪い』と自分を責めて終わる以外の選択肢が見えないことが多いです」 そんな差別的な意識から解放されるには、どうすればいいのか。
「最も大切なことは、自分の感情を否定せずに、その体験の背景にある事象に目を向けること。被害に遭ったら、まずは『悲しい、腹立たしいな』と感じる自分を許してあげる。本来『気にしたくない』と感じることに対して、自分が怒りや悲しみ、不安といった感情を感じるのは認めたくないもの。