違憲判決は「当然の結論」?LGBTQ訴訟に携わる弁護士の思いとは 「座して待つわけにはいかない」権利擁護へ続く挑戦
2023年5月、名古屋地方裁判所で、同性同士の結婚を認めない民法などの規定は憲法違反だとの判断が出された。その年の10月には静岡家庭裁判所浜松支部で、性別変更には実質的に生殖能力をなくす手術が必要だとする法律の規定は違憲だとする考えが示された。 【写真】市民権を得たプライドパレード、30年前日本で始めた92歳の男性が心配すること LGBT理解増進法に潜む差別、「大事なのは個々の幸せ」
いずれも、社会状況の変化を反映した画期的な司法判断にみえる。しかし、2つの訴訟に関わった堀江哲史弁護士(45)は至って冷静だ。「まっとうに審理すれば当然の結論なんですよね」 名古屋市の法律事務所長を務める堀江さんは、同じ志を持つ水谷陽子弁護士(35)とともに、LGBTQといった性的少数者の支援や権利擁護に取り組んでいる。「座して待つわけにはいかない」と形容する2人の闘い。これまでの道のり、そして今後の課題とは。(共同通信=平等正裕) ※筆者が音声でも解説しています。「共同通信Podcast」でお聴きください。 ▽弱い立場の力になりたい 名古屋城や裁判所に近く、多くの法律事務所が点在するオフィス街の一角に「ミッレ・フォーリエ法律事務所」はある。耳慣れない名前はフランス語の「ミルフィーユ」のイタリア語だ。設立した堀江さんが名字と趣味のお菓子作りにちなんで付けた。堀江さんは「『堀江法律事務所』みたいに名字をそのまま事務所名にするのが照れくさかった」と笑う。
三重県出身の堀江さんは、小学生の頃に愛知県大府市に転校した。そこで、方言やなまりをからかわれ、いじめの対象となったという。先生や親など、周囲の助けで解決したが、転校へのネガティブなイメージは残った。同時に、それが将来像を形作ることにもなった。「転勤がなく、弱い立場の人の力になれる仕事がいいと思い、弁護士を意識しました」 大学で法学部に進み、司法試験に挑戦したが苦戦した。2011年まで実施されていた旧試験は難易度が高く、不合格が続いた。仕事をしながら勉強を重ね「これで落ちたら諦めよう」と挑んだ31歳の秋、11回目にしてようやく合格した。旧試験が最終となる2010年のことだった。 弁護士として入った名古屋の事務所では、性別を女性から男性に変えた申立人の親子関係を巡る裁判に携わった。申立人は、自分と、第三者の精子提供で妻との間に生まれた子どもが、父子関係にあると認めるよう国に求めていた。最高裁まで争われ、2013年に父子関係を認める決定が出された。