研究資金配分機関に課題…予算急増、管理人材は争奪戦
共通業務集め外部委託探る
個人としては大学とFAを渡り歩きながらキャリアアップしていく道がある。JSTでは年俸制の定年制職員の枠を設けてサポートしている。組織を渡り歩く際にネックになっていたのが退職金だ。年収には大きな差はないが、退職金は一つの組織にとどまる方が大きくなる。そこで退職金分を年俸に織り込んで組織間を移動しやすくしている。橋本和仁理事長は「研究機関の悩みは、せっかくいい人がいてもプロジェクトが終わると手放さないといけないこと。次のプロジェクトまでJSTで預かり、研究開発プロデューサーとしての力を蓄えてもらいたい」と説明する。 米国ではFA業務のアウトソースが進んでいる。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の横島直彦副理事長は米エネルギー高等研究計画局(ARPA―E)を視察し、「正規の職員は60人しかいない。本当に重要な仕事のみに絞っていた」と振り返る。ARPA―Eの扱う予算はNEDOの約3分の1。NEDOの職員は1500人のため単純計算で業務の8割以上を外に委託していることになる。これが可能なのはエネルギー省専属の委託先が育っているためだ。省庁ごとに特定の企業がバックオフィス業務を一手に引き受けている。 横島副理事長は「日本も同様にできるとは言えないが、働き方を見直し付加価値の高い仕事に集中していくことが重要」と説明する。日本のFAがバラバラに小さく業務委託してもメリットは限られると想定される。FAと大学などで共通化できる業務を集めるなど、工夫が必要になる。 別のFAでは組織改革を進めたものの「ITを投じても投じても一向に人繰りが改善しない」と嘆く幹部もいる。このFAでは研究職も事務方も付加価値の高い業務にシフトするためにアウトソース活用を検討している。大学や国研の子会社に委託して集約する道もある。各機関では組織の柱となるプロパー職員を育成しつつ、人材の流動化やアウトソースなどで外の力を活用する。これを成功させるには業界として戦略を共有しておくことが重要になる。