「北京ビキニ」と三つ折りフォルダブルフォン【特派員コラム】
2002年夏、語学研修のために初めて北京に来た。上衣を脱いで街を闊歩するおじさんたちが多いのを見てかなり驚いた。中国語では上衣を脱いだという意味で「光膀子(クァンバンツ)」という。暑くて乾燥した天候に、少しでも体温を下げるための避暑策のようだった。道端はもちろん食堂、居酒屋、美容院など場所を選ばない恥ずかしいファッションに眉をひそめた。だが、上半身裸になった当の本人も、周りの中国人も、特に不都合を感じていない様子だった。 数百年前の中国の絵や1800年代を背景にした映画などにこのようなファッションが登場するのを見ると、かなり古い文化的風習のようだ。暑さを避ける女性だけの独特な露出ファッションがないことを見れば、中国の強い男性中心文化もこのような風習の発生と維持に一役買ったようだ。 光膀子はその後、一段階進化した。上衣を完全に脱ぐ代わりに、上衣を半分ほど上げお腹を露出させて歩くおじさんたちが登場した。2008年北京五輪を控え、中国政府が「グローバルエチケットを守ろう」として光膀子を規制したところ、男性たちが考え出した苦肉の策だと言う。外国メディアはこれを「北京ビキニ」と名付け、中国の立ち遅れた文化を示す象徴のように批判した。数百年数千年の風習を一日でなくすことはそれほど簡単ではない。 それでも大都市圏を中心にこうしたファッションの男性はだんだん減っている。体温を下げるエコファッションだという反論もあるが、他人に心理的不快感を与えてまで恥ずかしい服装をするのはやめようという雰囲気だ。北京、上海などがグローバル都市になり、外国人の目線に合わせようと努力する空気もある。 約20年ぶりの変化はもっとある。中国の通信機器企業ファーウェイ(華為技術)は先日、世界で初めて三つ折りフォルダブルフォン「Mate XT」を公開した。その翌日、ファーウェイの販売店で直接Mate XTに触る機会があった。画面は10.2インチで、普通のノート型パソコンほど大きかったが、重さは306グラムで予想より軽かった。全体的に粗雑さよりは堅牢さがより強く感じられた。ただ、価格が400万ウォン(約43万円)台と高いのが大きな短所だった。 フォルダブルフォンの発売でサムスンに遅れを取っていたファーウェイが、三つ折りフォルダブルフォンの発売ではサムスンに先行した。2019年、米国のトランプ政権の強力な制裁撤退を受けてスマートフォン事業をやめる直前まで行ったファーウェイが、5年ぶりにドラマチックに戻ってきたのだ。国内外のマスコミが、ファーウェイはサムスンはもちろんスマートフォン最強者のアップルと本格的な競争をするだろうとの見通しを示している。 ファーウェイの帰還はファーウェイの技術的な努力と成果だけを基にしたわけではない。中国政府の補助金と、iPhone購入制限令など見えない支援が大きな役割を果たした。国際的基準では反則に近いが、中国式の企業再生は厳然たる現実的条件だ。 先月、韓国のマスコミは青島ビール祭りに登場した一群の上衣を脱いだ男性を大々的に報道し、後進的文化だと批判した。面白いのは、主に上衣を脱ぐ40~50代の男性たちがファーウェイの三つ折りフォルダブルフォンの最大購入集団だということだ。あまりにも高価なので若者はとうてい買えない。来年の夏頃には、上半身裸の中年男性たちが三つ折りフォルダブルフォンを広げている姿を容易に見かけるようになるだろう。立ち遅れた文化的風習と最先端科学技術・産業が共存するところ、まさに中国だ。 チェ・ヒョンジュン | 北京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )