「初めて習う稲作農業を他の生徒たちは知り尽くしている…」少数精鋭のエリート中学受験塾で直面する“小4の格差”
中学受験の難関校を目指す子の家庭にとって、難関校対策に対応した塾選びは重要な要素となってくる。中でも近年は都内を中心に「少数精鋭の難関校対策塾」が増えており、注目を集めているが、その実態はどのようなものか。『中学受験 やってはいけない塾選び』が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏がレポートする「変わりゆく中学受験の塾選び」。【全4回の第3回】
* * * 中学受験をする生徒たちの家庭の層が大きく変化している。かつての専業主婦家庭から共働き家庭にシフトしているのだ。今どき、首都圏に住んで、子どもに中学受験をさせられるのは共働きでないと経済的に無理だからだ。 そのため、「なにがなんでも難関校」という方針の家庭も、今は母親がフルタイムで働いているケースが多い。 外資系企業に勤務するA子さんは、小学4年の息子を開成に入れたいという希望がある。同時に「中学受験の勉強は塾におまかせしたい」という希望もある。しばらく専業主婦をしていて、数年前に派遣社員として仕事に復帰、去年、正社員になったばかりだ。 「私は要領もよくないし、体力もそこまでないから仕事で手一杯です」といい、難関校合格に導いてくれそうで、かつ、面倒見がいい塾を探した。 今、Z会や早稲田アカデミー、enaなどの大手が「難関校対策」とはっきりと謳うブランド塾を展開している。また、関西の希学園も首都圏に進出している。これらは入塾テストもハードルが高いことが多く、少数制のエリート塾といえよう。 そういった塾はいくつかあるが、その中からA子さんがある塾を選んだ理由は、授業のスタイルにあった。 「その塾の授業は双方向で、生徒が手を挙げて発言をすることが多い。息子は小学校の授業で積極的に発言をしたがるので、そういう授業は楽しいんじゃないかって思って入塾させました」 ところがだ。その授業が原因で息子は塾に行くのを嫌がるようになってしまった。なぜなのだろうか。