新幹線・原発 インフラの技術継承【振り返る2024宮城】
仙台放送
「振り返る2024宮城」。12月25日は、私たちの生活を支える「インフラ」についてです。トラブルが相次いだ東北新幹線と再稼働した女川原発では、高度な技術を継承することの重要性と難しさが明らかになりました。 元日に起きた、能登半島地震。今年の日本は年明けから、大きな災害や事故が立て続けに発生。命を守るための「防災」や、社会インフラのアクシデントなど「備え」の重要性を、再認識させられる1年となりました。 宮城県内でも…。 『相次ぐ新幹線トラブル』 記者リポート 「JR仙台駅の新幹線改札前です。運転見合わせの影響でこちらにも多くの人が運転再開を待って集まっています」 乗客 「いろいろ事情があるんでしょうけど、最近そういうこと多いから、もう少しどうにかして」 東北と首都圏を結ぶ大動脈東北新幹線。今年はトラブルが相次ぎその度に長時間にわたって運休。走行中のはやぶさ・こまちの連結が外れるという、前代未聞の事態も発生しました。 全国的にもトラブルが相次いだ背景について、鉄道の安全に詳しい専門家からは、次のような指摘も。 工学院大学 高木亮教授 「コロナの時期の影響がいま出ているかもしれない。鉄道の乗客が大幅に減った。もしかすると技術断層ができてしまった。特に日本はオンザジョブトレーニングに過度に依存しているところがあって、現場での伝承がうまくいかないと、即座にいろんなことに影響が出るような仕組みにもなっている。実は経験をすごく持っている人で、そういう人たちの知識・技能がうまく継承されなかったみたいなことは聞いたことはあります」 ただ、JR東日本は仙台放送の取材に対し、「個々の事象ごとに要因があり、指摘された内容が背後要因とは考えていません」と回答。そのうえで、社内マニュアルに検査方法を明記するなどの改善策をとっているとしています。 『13年ぶりの再稼働』 賛否が渦巻く中、10月、東日本大震災発生時に、停止して以来、13年7カ月あまりを経て再稼働した女川原発2号機。重大事故を起こした福島第一原発と同じ、「沸騰水型」というタイプの原子炉で、同じ型の再稼働は震災発生後初めてです。 東北電力・元社員 後村昌和さん 「自分たちが仕事をしていた場所でもあるし、政府は20年代に20数パーセント原子力の比率を高めたいというような話もある。それらの一翼を担えると思うので、そういう意味では大変期待が大きいかなという風に思う」 およそ30年間、女川原発の保全部で原子炉機器の点検管理にあたってきた、後村昌和さん(77)。再稼働に大きな期待をにじませる一方で、不安も口にしていました。 東北電力・元社員 後村昌和さん 「それなりに我々が現役の頃、色々指導などで技術は継承してきたつもりだが、されていない部分が不安」 懸念していたのは「経験者不足」。東北電力は、女川原発で働く技術者およそ500人のうち、4割ほどが原発の運転が未経験だとしていて、再稼働に向けた工程では、実際に人為的ミスも発生しました。 こうした中、女川原発の保守運用に関わるメーカーでは…。 実際に女川原発の再稼働にも携わった技術者が、若手社員に対して沸騰水型の運用について研修を行っています。 東芝エネルギーシステムズ 長谷川学フェロー 「電力会社の運転をサポートしながら勉強することができればよかったが、そういうことができなかった。このシュミレーターを使って実際に体験してもらう教育を企画した」 この部屋では、シミュレーション設備や、立体映像で原子炉内の構造を見られる大型モニターを使って、13年間停止していた女川原発と同タイプの沸騰水型の構造や運転について、学べるといいます。さらに。 作業員 「地震発生模擬しました」 地震や津波が発生した際の状況を再現。注水作業などの模擬体験を行うこともできます。 震災後初めて、女川原発で沸騰水型が稼働したことは、技術継承の観点からも大きな意味を持つといいます。 東芝エネルギーシステムズ 長谷川学フェロー 「原子炉を起動したことによって経験できた知識を習得できたことは大きな財産。二度と1F(福島第一原発)の事故を起こしてはならないと思いますので、1Fの事故を起こさないようなプラントを一刻も早く構築して、それを稼働させていくということが重要」 東芝エネルギーシステムズ 前川風舞さん 「いろんな人の思いを引継ぎながら、一般の方々に安心と安全を届けられる技術者になれたら」 東芝エネルギーシステムズ 野村侑生さん 「住民の方々の不安を払しょくできるような仕事をしていきたい」 細部まで目を配り人の手で受け継がれてきた技術。その継承の重要性と難しさを、痛感させられる一年となりました。
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