『孤独のグルメ』が“飯テロドラマ”の王者であり続ける理由 松重豊の五郎さんに会える喜び
『孤独のグルメ』スペシャルだからこその味わいは……
まさに昨年放送の『孤独のグルメ2022大晦日スペシャル 年忘れ、食の格闘技。カニの使いはあらたいへん。』はその総括のようだった。仕事納めにも関わらず、商談相手(岩松了)からの強引な頼まれごとを断れず、大きなカニのオブジェを愛車に載せて北海道まで行くことになった五郎。旅の途中で美味しいものを食べたり、困っている若者(葉山奨之)の手助けをしたりしていると、気づいたらカニを載せた車ごと人気者になっていて、その土地に住む大勢の人たちに出迎えられていた。 とはいえ、いつまでも皆と一緒に盛り上がるのではないのが五郎らしいところで、空腹を覚えてそっと喧騒を抜け出し、一人静かな店に入り、長い歴史に裏打ちされた美味しさの「とりめん」と、Season1の第1話で登場したメニューと同じ「ホッケスティック」を食べる。記念すべき10周年の締めとして素晴らしかった。 さて、今年の大晦日スペシャルは沖縄編とのこと。スペシャルの回、もしくは「出張編」の何が楽しいかというと、やはり五郎が気軽に立ち寄ることができない地域に住む人々にとっては「五郎さんがうちの街のあの店に行った!」という新鮮な喜びを味わえることであり、その土地ならではの食材を使った料理と五郎の出会いを目の当たりにできることだろう。 そして、もう1つ、旅先で五郎の行った店に出会えるという喜び。私事ではあるが、台湾旅行をしていた際、台湾で「五郎さんの行った店」を、五郎の顔写真と番組の紹介文とともに偶然見つけた時は、妙な安心感、ホーム感に包まれたものである。台湾に限らず、「五郎さんの行った店」に旅の途中で立ち寄ってみたことがあるが、美味しいご飯だけでなく、お店の人たち、その店の雰囲気そのものにぬくもりを感じる、もう1度行きたい(実際もう1度行った)、素敵なお店だった。きっとそれは、番組が放送されるまでにスタッフが何度も店に通い、店の人と常連客のやりとりまでも作品に組み込もうとする姿勢の賜物であり、料理だけでなく、その店の雰囲気含めて「いいお店」が紹介されているからだろう。 また、スペシャル版の楽しいところは、『孤独のグルメスペシャル~真夏の博多出張スペシャル』(Season4)における丸天うどんと小松政夫のように、その土地のレジェンドが出演すること。本日の沖縄編は国仲涼子と、川平慈英が出演する。朝ドラ『ちゅらさん』(NHK総合)の国仲涼子と五郎さんがどんなやりとりを繰り広げるのか。
藤原奈緒