学校の先生より塾講師になりたい新卒者が激増…辞退者7割超の自治体も
かつては人気の職業だった「学校の先生」に異変が起きている。 「高知県教育委員会は10月29日、2025年度採用の小学校教諭(採用予定130人程度)について、合格者の280人のうち、全体の7割を超える204人が採用を辞退したと明らかにしました」(全国紙社会部記者) ■【画像】小・中学校の教員の一日の在校時間は10時間を超える■ 教育関係者の間でも大きな波紋を呼んでいるが、 「実はこのような傾向は日本全国であります。教員の時間外勤務時間は月平均96時間と過労死ライン越え。それに加えて、親や生徒の問題を抱えることも多く、若い世代から見ると、やりがいもなく、憧れの職業ではなくなっています。あくまで就職先がないときの最終手段として受験するんです」(リクルートサイト社員) 学校教員が抱える過酷は指摘されて久しい。フジテレビ『めざまし8』や『ホンマでっか!?TV』に出演した教育ジャーナリストで教育評論家の松本肇氏も、この現状に警鐘を鳴らす一人だ。 「授業以外にも、生徒の私生活や部活の指導もしなければなりません。休日返上で学校に行っても、公務員なので残業代が出ず、公立学校の“教職調整額”と呼ばれる残業代不支給の制度では、時給換算すると悲惨なことに。さらには、クラス担任になると、モンスターペアレントやいじめ、不登校等様々な問題を背負わなければなりません」 こうした労働環境は、離職をまねく悪循環を生む。 「離職率が高いので、人手不足。経験の少ない若手が、いきなり担任を任されるというケースも少なくない。働き盛りの中堅の離職が多いので、経験の少ない教師は年の近い先輩がいない。すると、悩みをなかなか相談できず、一人で抱え込んでしまうという悪循環が生まれてしまいます」(前同)
■教育の道を志す若人は塾講師に
今、こうした環境を嫌って、学校教員ではなく、学習塾の講師を選ぶ人が増えている。 では、給与面ではどうか。 「塾講師の初任給は正社員の場合、平均で25万円程度、学校教諭の初任給は、小中高ともに、大卒20~21万円で短大・専門卒が18万円が相場です」(前出のリクルートサイト社員) 額面でも、やや塾講師が魅力的か。 「拘束時間も短く、サービス残業はしなくていいというような塾は増えています。“残業の多い学校の教師をやるなら、学習塾の方がコスパも良い”という考え方の人は多い。副業も自由なので、家庭教師との二足のわらじも可能ですから」(前出の松本氏) だが塾講師の場合、非正規雇用の形態が多く、不安定。福利厚生やボーナスがないことを不安視されてきた。 「たしかに福利厚生という点では、学校教員はしっかりしています。公務員なので妊娠出産の休職中の育児手当て等も手厚いです。通常、給与は年齢によって上がっていくケースが多いですが、私立の場合、指導力に優れた先生を長く置いておきたいという所があるので、実力で評価する制度もあるようです」(前同) 働く場所によって違いは出るが、安定を求めるなら公務員である学校教員も悪くないのでは。 「塾講師は、経営のノウハウを学んで独立という形も選択出来ます。広告宣伝や塾運営などの経営のノウハウは確立されていて、独立が成功するケースは多いです。テレビで活躍されている人も多いですし、実力、人気次第で億万長者も夢じゃないですよ」(前同) 働き方においてはっきりと特徴が分かれる両者。今後はどうなっていくのだろうか。 「教師から塾講師に転職する人が多くなり、引き続き学校教員は苦しい学校運営を任されていく傾向が続くでしょう。一方、学習塾も、少子化の影響で、生徒が減っているので、実績のある塾だけが生き残る厳しい世界になるはずです」(同) 先の見えない教育現場のサバイバル時代。 稼げる夢のある塾講師と、過酷だが安定した学校教員。 未来ある若者たちが選ぶのはいったいどちらか――。
ピンズバNEWS編集部