米政府、シリア暫定政府指導者の逮捕報奨金を撤回 首都ダマスカスで外交協議
アメリカ政府は20日、シリアの事実上の指導者となっているアフメド・アル・シャラア氏について、同氏の逮捕に関する1000万ドル(約15億3600万円)の報奨金を撤回した(アル・シャラア氏は今月初めまで「アブ・モハメド・アル・ジョラニ」を通称として名乗っていた)。 アメリカの代表団はこの日、首都ダマスカスに到着。米外交高官と、アル・シャラア氏が率いる「ハヤト・タハリール・アル・シャーム(HTS、「シャーム解放機構」の意味)」の代表との会談で、報奨金撤回が決まった。 バーバラ・リーフ国務次官補は、アル・シャラア氏との議論は「非常に生産的」であり、同氏は「現実的」な人物だと評した。 HTSは今月8日にバッシャール・アル・アサド政権を打倒し、暫定政府を設立した。アメリカ政府は依然として、HTSをテロ組織に指定している。 米国務省の報道官によると、代表団はアメリカが支持するシリア政権の「移行原則」、中東情勢、そして過激派組織「イスラム国(IS)」との戦いの必要性について話し合った。 報道官によると、アメリカ側はそのほか、アサド政権下で行方不明になったアメリカ市民について、情報を求めていると伝えたという。行方不明になっている中には、2012年にダマスカスで誘拐されたジャーナリストのオースティン・タイス氏や、2017年に行方不明になった心理学者のマジド・カマルマズ氏が含まれている。 こうしたなか米大使館の報道官は、リーフ国務次官補が参加する予定だった記者会見が「安全上の懸念」から中止されたと述べた。しかし、その後の会見でリーフ氏はこれを否定し、「街頭での祝賀」が遅延の原因だと説明した。 アメリカがシリアで正式な外交活動を行ったのは10年以上ぶり。 アサド政権の打倒以来、シリアでは劇的な変化が進んでいる。欧米諸国はアラブ諸国にも働きかけつつ、新たな統治体制に影響を与えようと素早い取り組みを進めている。 米外交団の訪問は、最近行われた国連やイギリス、フランス、ドイツなど他国の代表団の訪問に続くもの。 上級官僚からなる代表団にはリーフ氏のほか、ロジャー・カーステンス人質問題担当大統領特使、国務省近東局のダニエル・ルビンスタイン上級顧問が参加した。 国務省報道官はこのほか、代表団がシリアの市民社会団体や様々なコミュニティーのメンバーと「彼らの国の未来に対するビジョンと、アメリカがどのように支援できるか」について話し合ったと述べた。 この会談は、HTSとの対話姿勢を示すものだが、一方で、HTSに対して包摂的で宗派性を超えた政府への移行をさらに強く促す結果にもなっている。 米政府は、HTSのテロ指定解除を検討する前提に、一連の条件を提示している。これは、シリアが切実に必要としている制裁緩和への道を開くための重要なステップとなる可能性がある。 一方、アメリカ中央軍(CENTCOM)は、ISの指導者アブ・ユシフ氏とその部下2人が、シリア北東部デリゾール県での空爆で死亡したと認めた。 CENTCOMは20日の声明で、アサド政権とロシア軍が以前支配していた地域で19日に空爆を行ったと発表した。 CENTCOMのマイケル・エリック・クリラ司令官は、アメリカはISが「シリアの現状を利用して再編成することを許さない」と述べた。また、ISがシリアで拘束されている8000人以上のIS戦闘員を解放しようとしていると説明した。 (英語記事 US scraps $10m bounty for arrest of Syria's new leader Sharaa)
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