「紅麹問題」で噴出した「機能性表示食品」規制強化の声、業界の「中の人」が語った本音
業界の声が聞こえてこない
消費者庁が設置した「機能性表示食品を巡る検討会」は、4月17日の初会合に続き、24日には事業者団体と消費者団体の代表を呼んで話を聞くなど、「在り方」を巡って急ピッチで作業を進めている。論議を受けて消費者庁は、5月末までに制度見直しの方向性を取りまとめる方針だ。 【写真】サプリの摂りすぎで「腎臓」が壊れる…!命を蝕む「11種類の成分」の実名 小林製薬の紅麹の成分を含むサプリメントを摂取した人が、腎臓病などを発症した被害が続出している。これまでに5人が死亡、延べ235人が入院したことが明らかになっている。これを受けて消費者庁は機能性表示食品の総点検を実施した結果、小林製薬のサプリメントを含む35の製品で、合わせて147件の被害情報が医療関係者から事業者に寄せられていたと発表した。 制度見直しにかける時間は2ヵ月弱。紅麹原料を分析した結果、プベルル酸以外に少なくとも2つの通常は入っていない物質が確認されており、厚生労働省などは物質の特定を含め健康被害の原因解明を進めるが、いつになるかは見通せない。 それを待ってはいられないということで、制度の見直しを先に進める。作業期間はいかにも短いが、それが逆に「サプリメントで死亡事故」の衝撃の大きさを表わしている。気になるのは機能性表示食品業界の声が聞こえてこないことだ。 批判的な報道は、小林製薬の対応の遅れや製造過程の管理体制の不備だけでなく、事業者が安全性や機能性の科学的根拠などを消費者庁に届け出るだけで販売できる機能性表示食品そのものにも向けられている。
6865億円の市場規模
国が審査を行い、食品ごとに消費者庁長官が許可している特定保健用食品(トクホ)に比べると甘く緩い安全基準、13年に安倍晋三首相(当時)が旗を振った「成長戦略第3弾」の規制緩和の一環として15年から導入されたという政治的思惑、2023年の市場が前年比19・3%増の6865億円に達したという市場規模……。 テレビ番組では、そうした背景が右肩上がりの成長チャートとともに語られる。そしてコメントを出す専門家は、医師や薬剤師や医学・薬学系大学教授、あるいは健康被害に敏感な消費者団体の代表などで、制度改正は当然という空気が既に醸成されている。 そのうえ「在り方」を巡って論議を進める消費者庁を所管する自見英子・内閣府特命担当大臣は内科医で、紅麹問題を調査する武見敬三・厚生労働相は自見氏と同じく日本医師会の推薦候補である。 さらに制度改正の中核を担う検討会の構成員は、座長として議論を仕切る中川丈久・神戸大学大学院法学研究科教授以外は医学、薬学の関係者・専門家ばかり。医療界は機能性表示食品の効果や安全性を否定的に見ているだけに、規制強化の方向性が打ち出されるのは確実だと思われる。 原因解明はまだにせよ、5名の方が亡くなった事実は重く業界としてはメディアと医療界が一体となった攻勢に意見はしにくい。サントリーウエルネス、やずや、DHC、世田谷自然食品などテレビやネットで広告を打って一般にも知られる大手のなかには、「私どもの商品の品質、安全性に問題はありません」といった趣旨の手紙を顧客に送っている企業はあるものの、会社として今回の事件を踏まえ、機能性表示食品全体に対する見解を出しているところはない。