松本亮を大差判定で下したWBA王者ローマンが対戦候補に亀田の名を挙げる
U-15から横浜高校と、同い年のWBO世界Sフライ級王者、井上尚弥と横並びの評価を受けて高校「4冠」。井上尚弥よりも、先にプロデビュー、2014年にはOPBF東洋太平洋スーパーフライ級王座も手にして17連勝。大橋会長は、「井上、松本とタイプの違う2人の逸材が、将来の大橋ジムを引っ張る」と公言していた。 2016年には水面下でバンタムでの世界戦交渉が始まった。だが、治療したはずの持病が再発していた。全身に力が入らない状態で、試合に臨みプロ初黒星。副甲状腺機能亢進症と診断されて手術を受けた。約半年の休養生活を経てリング復帰。4戦全勝で、2017年の年末にはついにローマンとの世界戦が内定していた。 だが、また不運に見舞われる。 スパーリング中に眼窩底骨折の怪我を負い、世界戦が流れたのである。それでも大橋会長も、松本自身も下を向かなかった。テレビの生中継もなく、試合会場は、後楽園ホールとなったが、ついに世界のリングに立ったのである。この日のホールは、松本を応援するオレンジのハッピで埋まった。この努力の軌跡は必ずや次へとつながる。 大橋会長が言う。 「ボクシングには、いい負け方と悪い負け方があるが、今日はいい負け方だった。日本タイトルからやり直しだな」 最初から最後まで空回りはしたが、二度と立ち上がれないほど叩きのめされた試合ではなかった。 未完の大器のその才能とパワーが不発に終わっただけの話である。その小さな差こそが、世界との差ではあるのだが、決して届かない場所ではない。 「甘かったということです。もっと練習をして上を目指したい」 中学時代の武勇伝を語らせれば、右に出るものがいないほどの松本だが、この日ばかりは、最後まで神妙だった。 さて王者の控え室である。 去年9月に久保隼(真正)から取ったベルトの初防衛を果たしたばかりだというのに威勢がいい。 「次は、フローレスとの指名試合。それをクリアすれば、統一戦を目指す。もちろん、誰の挑戦だって受ける。亀田も候補の一人だ」 亀田和毅の名前が出た。今日1日にはIBF世界スーパーバンタム級王者、岩佐亮佑(セレス)の防衛戦の会場にも足を運ぶという。 再起、そして、世界再挑戦を狙う松本は、一度、立ち止まった世界戦レースに再び追いついていかねばならない。いっそのこと強靭なフィジカルとパワーを生かすため、WBA世界ミドル級王者、村田諒太のようにブロックを固めてプレッシャーをかけるスタイルへの転身を考えてみるのも一手ではないだろうか? (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)