能力の半分程度が好印象 フォード・カプリで1週間 旧車は「本当の日常の足」になる?(2)
能力の半分程度で流している時が好印象
フォード・カプリ 1.6Lの乗り心地の第一印象は、驚くほど良かった。しかし少し走って、この時代のクルマは、能力の半分程度で流している時が1番優れることを思い出した。それ以上飛ばすと、欠点が明らかになっていくのだ。 【写真】能力の半分程度が好印象 フォード・カプリ 1.6L(Mk2) 同時代のこんな旧車もいかが? (138枚) カプリも例外ではない。平均的な道を平均的な速さで流している限り、落ち着いていて快適。少し飛ばし始めると、姿勢制御が乱れてくる。リア・サスペンションはリーフスプリングで、段差超えも得意とはいえない。 一緒に過ごす時間が長くなるほど、現代のサスペンションの優秀さを思い知っていく。英国の一般道は維持管理が芳しくないが、それが日々の不満も大きくなだめていることを再確認した。 ステアリングにパワーアシストはナシ。ステアリングホイールの直径が大きくレシオはスローで、切り始めから鋭く反応することはない。それでも、違和感はない。 ブレーキはしっかり効くものの、ペダルの感触はスポンジー。アシストは備わるが、この10年後のフォード車のような、ダイレクトな感触はない。 最高出力は73psしかないから、0-100km/h加速は14.0秒。スポーティとはいえないクーペだが、筆者としては否定しがたい訴求力も備える。 形と色、そのものが好ましい。当時の人も、カプリのスピリットと同じくらい、デザインを気に入っていた。当時を知らない若い人たちにも、カッコ良く見えている様子。
ケータハムを想起させるシフトフィール
もう1つは、シフトレバーとクラッチペダルのフィーリング。レバーは軽く滑らかに動き、初期の4速MTのケータハム・スーパーセブンを想起させるほど。クラッチペダルも軽く、ストロークは理想的。フライホイールの重さも丁度いい。 高速道路を問題なく走れるが、より高めのギアが欲しくなる。廉価なLグレードなため、タコメーターが備わらない。それでも、110km/h程度で走っていると、高い回転数でエンジンが仕事をしているのが伝わってくる。 ロードノイズは、80km/hを超えた辺りから急に大きくなる。流れが遅めの高速道路でも、少し声を張らなければ助手席の人との会話は難しい。ところが、不思議なことにストレスは大きくない。 カプリ Mk2は全幅が1698mmと細く、渋滞しがちな都市部でも扱いやすい。郊外のカーブでは、限られた車線内でライン取りを楽しめる。スチールホイールは13インチで、幅が控えめなダンロップ・タイヤでも、グリップ力は充分ある。 ボディロールは、現代の感覚ではかなり大きめ。カプリに詳しい友人が、テールハッピーな特性を指摘していたのを覚えているが、それはパワフルなV6エンジン仕様に限られていた。 直列4気筒のカプリは、ステアリングホイールへ明確な感触を伝えつつ、現代のモデルを驚かせる回頭性を披露する。動力性能は及ばなくても、面白い。より強力なエンジンを載せていれば、見た目に合致する活発な走りを披露することだろう。