AIの発展で2024年の金融犯罪損失は4,856億ドルに? 新・金融犯罪捜査自動化AIツール「Hummingbird」に寄せられる期待
注目の「Hummingbird Automations」の仕事
同社CEOのJoe Robinson氏は「(このツールが)目指しているのは、金融犯罪調査の一助となる一口サイズの自動化レシピです」と語る。 従来の金融犯罪調査は社内のスタッフが定期的に特定の顧客をピックアップし、疑わしい動きがあるかを分析し、犯罪の証拠が見つかれば外部当局にケースとして依頼するという手間のかかるものであったとも。 「膨大な金融取引データを徹底的に調べて異常を見つけ、詳しく調べる価値があるかどうかを判断し、お金がどこから来てどこへ行くのかを追跡することにより、犯罪によって派生したお金である可能性のある動きを洗い出す」。この途方もない仕事のうち、実際にケースとして当局に動いてもらう前の準備のかなりの部分を、このHummingbird Automationsのプラットフォームが自動的に行ってくれることで、マネーロンダリングや脱税といった件数の多い金融犯罪に割く手間が省け、人的資源を人身売買などのもっと悪質で機械では検知しにくい犯罪に使えるようになると見込んでいる。 同ツールがレシピ=ワークフローのライブラリを利用して、人間の代わりに行ってくれる作業は以下のようなもの。 ●顧客・ビジネスの把握(継続的・定期的なモニタリングにより、顧客の金融行動の追跡・監視・調査の開始などを自動的に行う) ●品質保証(直近の完了した作業の品質を検証する) ●ケース化の準備(当局に捜査を依頼する際にケースの情報と調査結果を事前に入力することで、人力による調査が迅速に) ●ケースのモニタリング(期限切れが近いケースや操作が却下されたケースなど、注意が必要なケースをユーザーに自動的に通知) ●ケース管理(ケースの作成、情報更新などの管理タスクを自動化) ●アクティビティダイジェスト(ケースのアクティビティに関するレポートを定期的に自動作成することにより監視を強化) 先述のRobinson氏は、「AIはビッグデータを解析して、ドキュメント全体における傾向や異常を見つけたりするのが非常に得意」であるため、このプラットフォームのAIは「調査員の手元にある情報を要約してくれることで、何が起きているのかを解釈する部分をサポートしてくれたりといった可能性があります」と説明している。 2023年の春から行われてきたベータ版テストに対しても好意的なフィードバックが寄せられているとのこと。どんどん複雑になる法規制と、それらをすべてクリアする費用対効果の高い調査ツールの必要性という二重の課題に、AIの効率性と正確さが力強い味方となると期待が寄せられている。
文:ウルセム幸子/ 編集:岡徳之(Livit)