【#佐藤優のシン世界地図探索79】石破新首相誕生と、露軍機領空侵犯に警告フレア発射
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく! * * * ――9月23日、露軍の哨戒機IL38が、北海道礼文島付近の日本国領空を3度に渡り侵犯。スクランブル発進した空自の戦闘機は、対領空侵犯措置が始まって以来、初めてフレア発射による警告を行ないました。 フレアは本来、エンジンなどの熱源をロックオンして発射されたヒートミサイル(赤外線誘導ミサイル)に対して、熱源を放出することで攻撃を避けるもの。ただし、対領空侵犯としては、無線警告、翼を振るなどの手段でも領空侵犯を止めない場合、フレアを発射します。その次の手段は「信号射撃」といって、20mm機関砲による威嚇射撃となっています。 佐藤 軍事専門家の一部からは、「米潜水艦がいたため、それを追跡していたのでは」という見方が出ているようですね。 ――はい、そうなんです。空自戦闘機が撮影した露軍哨戒機の写真を見ると、低空を飛んでいる対潜哨戒機で、腹部のウェポンベイ(爆弾倉)が開いています。さらに空域の真下は、宗谷海峡の入り口付近。御存知のように、オホーツク海は露海軍ICBM核ミサイル搭載原潜の聖域です。 佐藤 そういう見方もありますが、領空侵犯は常に戦争になる行為です。だから、注意して領空侵犯をしないように監視するはずです。しかし、この段階で領空侵犯もやむを得なしとしたということは、大きな判断があると思います。 ――それよりも大きな判断とは? 佐藤 政治的な意図です。まず、現在の日露関係は悪化しています。それから、日本の内政も混乱しています。そして、岸田文雄総理大臣はちょうど米国に行っていました。 ――はい。 佐藤 そういう時に日本の防衛体制に何か隙や穴があるのかどうか、この潜水艦のグチャグチャにあわせて見ようとしたのだと思います。 ――すると、日本の空自がフレアで対応したというのは正しかったのですか? 佐藤 正しいです。 ――「これはやべぇ」と、ロシアは思ったわけですね? 佐藤 そういうことですね。ちゃんと機動できて、フレアで対応しています。これは銃撃の一歩手前ですよね? ――そうです。次は信号射撃です。過去に一度だけ、沖縄の領空を侵犯したソ連爆撃機に向けて、F4ファントムから撃っています。