「空飛ぶクルマ」飛んだ 防災・観光面で期待 和歌山県串本町
和歌山県は21日、串本町潮岬の潮岬望楼の芝で垂直に離着陸できる「空飛ぶクルマ」の実証飛行をした。県内初の取り組みで、約600人が見物に訪れ、大阪・関西万博の目玉の一つでもある次世代の乗り物に注目が集まった。 【空飛ぶクルマの動画はこちら】 県は昨年4月、空飛ぶクルマの実用化に向けた計画作成を発表。民間企業と連携し、運航事業者が利用できる離着陸場の整備などを進めてきた。将来的には、県内での商用運航実現を目指しており、県民への周知や騒音・風などの飛行データの収集を目的に、今回の実証飛行を実施した。 機体は岡山県の一般社団法人MASC(マスク)が所有する、イーハン社(中国)製の「EH216」。2人乗り用で、全高1・93メートル、全幅5・75メートル。航続距離は30キロ、最高速度は時速130キロ。垂直に離着陸ができるため、滑走路などを必要とせず飛べるのが大きな特徴で、機体の駆動に電動モーターを使用し、静かでクリーンな移動が可能になると期待されている。 実証で機体は電源が入ると、プロペラ部分にあるランプが点灯。少しするとプロペラが回転し、スタート位置で高さ20メートルまで垂直に浮上した。その後、ゆっくりと前進し、最大40メートルまで上昇しながら、あらかじめ設定された約300メートルの周回ルートを自動飛行した。約3分間の飛行が2回行われ、1回目は無人、2回目は技術検査員が乗って飛行した。離着陸の瞬間は、周囲から拍手や歓声が上がった。 岸本周平知事は「わくわくする気持ちで見ていたが、風の影響を感じさせない安定した飛行だった。有人での飛行も成功し、喜んでいる。観光・防災の両面で期待ができる。全国に先駆けて実用、運用を進めていきたい」と話した。 このほか、近くの南紀熊野ジオパークセンターでは「機運醸成イベント」も開かれ、地元の高校生による発表や、仮想現実(VR)での空飛ぶクルマの疑似体験などがあった。
紀伊民報