久保建英不在でパリ五輪18人どう変化? OA“最小限”提言の「ベスト布陣」を考察【コラム】
五輪で活躍→ビッグクラブへ売却もクラブの“戦法”
その点、シント=トロイデンの藤田譲瑠チマ、山本理仁、鈴木彩艶の3人はクラブ側も協力的で、障害はなさそうだ。最終予選の時は鈴木彩艶の招集は見送られたものの、五輪本番となれば話は別。同じ欧州開催だったロンドン五輪で活躍した吉田が直後にイングランド1部サウサンプトンへの移籍を成功させた例もあるため、クラブ側も「選手を高く売るためのアピールの場」と位置づけているからだ。 「欧州格上リーグに選手を送り、移籍金を稼ぐとともに、クラブのステイタスを上げる」ことを重視するシント=トロイデンにとって、3人揃って五輪に参戦するメリットは大きい。特に最終予選でキャプテンを務め、評価を一気に上げた藤田には大きな期待がかかるところ。彼の統率力やリーダーシップは今のチームに不可欠だと言っていい。 守備陣も最終予選のメンバーを軸に選出した。左SBは大畑歩夢(浦和)やバングーナガンデ佳史扶(FC東京)も有望な人材ではあるが、やはり18人枠を考えた時、両SBができる選手が1人必要。そうなると内野貴史(デュッセルドルフ)を連れていくのがベターだ。内野も最終予選では出番が少なかったものの、クラブに戻った後は5月19日の最終節マグデブルク戦に先発。23、27日に行われるボーフムとの1部2部プレーオフにも参戦すれば、修羅場経験を積み重ねた状態で五輪の大舞台に立てる。そのアドバンテージも生かしたいところだ。 右SBにしても、今季売り出し中の濃野公人(鹿島アントラーズ)や最終予選メンバーの半田陸(ガンバ大阪)らがいるが、187センチの長身でいざという時はCBもこなせる関根大輝(柏)はやはり外せない。酒井宏樹の後継者とも言うべきポテンシャルを備えた大器に大舞台を経験させることは、今後の日本代表にもプラス。彼には成長曲線をさらに引き上げてもらいたい。 久保抜きの18人でメダル獲得を目指すというのは難易度が高いかもしれないが、日本はロンドン・東京の2大会で準決勝まで進んでいる。その経験値も生かしつつ、チーム全員が持てる力の全てを出し切れば、高い領域まで辿り着くことは不可能ではない。 まずは24日の6月シリーズ日本代表メンバー発表、そして30日のU-23日本代表のアメリカ遠征メンバーの行方をしっかりと注視していきたいものである。 [著者プロフィール] 元川悦子(もとかわ・えつこ)/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。
元川悦子 / Etsuko Motokawa