フィリピン、中国海警局の刃物使用を非難 「海賊しかしない行為」
香港(CNN) フィリピンは南シナ海で今週発生した中国海警局の船とフィリピン船の衝突に触れ、海警局が刃物による「乱暴な攻撃」に出たと非難した。南シナ海での争いは激しさを増しており、米国を新たな世界紛争に巻き込む恐れが出ている。 【画像】海上で対峙するフィリピン軍と中国海警局の艦艇 フィリピン軍が20日に公開した映像には、中国海警局の要員が斧(おの)などの刃物やとがった道具をフィリピン兵に向け振り回したり、ゴムボートを切り裂いたりする様子が見える。これについてフィリピン政府は、「あからさまな侵攻行為」と形容している。 フィリピンと中国は非難の応酬を繰り広げている。衝突は17日、係争中のスプラトリー(南沙)諸島にあるセカンド・トーマス礁で発生。フィリピンは当時、この岩礁に乗り上げている第2次世界大戦時の軍艦に駐留する兵士に補給物資を届ける任務を実施していた。 天然資源に恵まれ、戦略的に重要な海上交通路である南シナ海では激しい衝突が相次いでいる。 しかし今回の映像に捉えられた場面は、長年くすぶっていた緊張が新たな分岐点を迎えたことを示す。中国はこれまでに比べはるかに攻撃的な戦術を採用しており、アナリストによると、フィリピンやその主要同盟国である米国の反応を試している様子だという。 中国外務省は19日、海警局が衝突中に取った「法執行上の措置」は「プロフェッショナルで自制的なもの」だったと述べ、「フィリピンの要員に対する直接行動には出てない」との認識を示した。 シンガポールにあるラジャラトナム国際学研究所の研究員、コリン・コー氏は、中国の海洋法執行当局がフィリピン海軍の艦艇に乗り込むのは前例がないと指摘した。 コー氏は「ゴムボートかもしれないが、フィリピン海軍の艦艇であることに変わりはない。国際法上、こうした艦艇は主権免除を享受する」と説明。「これは非常に危険。戦争行為と捉えられる可能性さえあるからだ」との見解を示した。 フィリピン軍関係者は19日、中国海警局の関係者がフィリピンのゴムボートに「違法に乗り込み」、分解された小銃7本を「略奪」して船外モーターや通信・航法装置を「破壊」し、フィリピンの要員の携帯電話を奪ったと指摘した。 フィリピン軍のロメオ・ブラウナー参謀総長は声明で、「こんな行為は海賊しかしない。船に乗り込んで盗みを働き、船体や装置、持ち物を破壊するのは海賊だけだ」とコメントしている。