タイタニック監督、元007俳優も参戦 「日本は100年遅れている」「法律を尊重しない国」…日本人だけが知らない「シー・シェパード」創設者釈放運動の熱狂
カンパ目標は25万ドル
こうした運動が高まりを見せる中で、もしデンマーク政府が正式に日本への身柄移送を決定すれば、今度は日本バッシングへのうねりが起こり、騒動の舞台はワトソン容疑者の取り調べや裁判を行う東京に移る。 ワトソン容疑者が所属しているCPWFは署名集めだけでなく、訴訟費用などの支援金も募り始め、目標額を25万ドルに設定している。 ワトソン容疑者の弁護団には、日本から逃亡した日産自動車元会長のカルロス・ゴーン元被告の代理人で、デンマーク駐在フランス大使を務めたこともあるフランソワ・ジムレ氏がついている。 ジムレ氏はすでにパリで取材対応をしており、日本政府は「人権に関する国際条約を遵守していない」と批判。「東京はテクノロジーで10年先行していても、司法・監獄(制度)で100年遅れている」と対決姿勢を鮮明にしている。 ワトソン容疑者はグリーンランドで声明を発表し、「日本は復讐を求めている」と敵愾心をむき出しにしている。日本に移送されれば、拘置所から反捕鯨キャンペーンや日本バッシングを行うことも予想され、すでに日本政府の関係者はそうした対応の準備にも着手している。 デンマークメディアによれば、ワトソン容疑者を日本へ身柄移送するかどうかはデンマーク司法省が決断を下すという。デンマーク政府外交関係者から「原則的にデンマークにとってワトソン(容疑者)を日本に移送しないことは難しいだろう」という声も出ている。 グリーンランドの地方裁判所は8月15日、ワトソン容疑者の勾留を9月15日まで延長する判断を下した。フランスメディアVAKITAによれば、ワトソン容疑者は審理を終え、ふたたび拘置所に戻る際にインタビューに応じ、「われわれは日本の違法な捕鯨行為にさらに圧力を加えるつもりだ」と答えた。 世界を虜にする反捕鯨のカリスマの運命を決める司法闘争が始まった。日本に移送される瞬間が、日に日に近づいている。 佐々木正明(ささき・まさあき) ジャーナリスト、大和大学教授。岩手県一関市生まれ。大阪外国語大学ロシア語学科(現・大阪大学)卒業後、産経新聞社入社。モスクワ支局長、リオデジャネイロ支局長を経て、運動部次長、社会部次長などを歴任。2021年より現職。8年前はウクライナのマイダン革命やロシアによるウクライナ併合を現地で取材した。専門分野はロシア・旧ソ連諸国情勢、国際情勢に加え、オリンピック・パラリンピック、捕鯨問題などにも詳しい。単著に『シー・シェパードの正体』、『環境テロリストの正体』、『「動物の権利」運動の正体』など。 デイリー新潮編集部
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