エルヴィス・プレスリーと14歳で恋に落ちた妻の人生とは?ソフィア・コッポラ最新映画『プリシラ』
発見、感動、思索……知的好奇心を刺激する、映画好きな大人のための今月の新作を厳選! 【写真】今月見るべき新作映画3選
スーパースターの妻が選んだ生き方をソフィア・コッポラが丹念に描く『プリシラ』
ソフィア・コッポラが、エルヴィスと14歳で恋に落ちたプリシラ・プレスリーの回想録から紡ぎ出し、主演ケイリー・スピーニーにヴェネチア国際映画祭最優秀女優賞をもたらした最新監督作『プリシラ』。 1959年、アメリカ軍将校の父の転属先、西ドイツで暮らしていた14歳のプリシラは、兵役で駐留していたエルヴィスと出会い、初めての恋に落ちる。そして彼の邸宅からカトリックの名門ハイスクールに通うことを条件に両親を説き伏せ、彼と生きるためにアメリカに飛んだ。 熱気あふれる60年代のメンフィスでプリシラを迎えたのは、パステル・ピンク、ベビー・ブルー、ゴールドが輝くエルヴィスの大豪邸「グレースランド」での夢のような暮らし。髪の色もメイクもドレスもダーリン好みに変え、カジノに繰り出し、“キング”ことスーパースターとその取り巻きたちと遊びに興じる日々。 しかし彼が取り巻きを引き連れてツアーや映画撮影に出てしまうと、いつかかってくるともしれない電話を待つ日々が待っていた。そしてエルヴィスがマネージャーの“パーカー大佐”に縛り付けられ搾取されたように、プリシラもエルヴィスに縛り付けられ、屋敷に取り残された。
監督デビュー当時から『ロスト・イン・トランスレーション』や『マリー・アントワネット』など、声高にフェミニスト映画と謳うことなく、一貫してガーリーで洗練されたトーンの中に孤独と対峙しながらアイデンティティを模索するヒロインを描き続けてきたソフィア・コッポラ。今回も駆け足で少女から大人へと成長するプリシラの目線から伝説のビック・カップルを描き、彼女の葛藤や心の移ろいを切なく浮かび上がらせる。 そしてアーティストとしての苦悩を子供じみたかたちでプリシラにぶつけるエルヴィスに対し、22歳という若さで母になったプリシラの決意で映画を締めくくる。 エルヴィスの曲の使用が認められなかったため、サントラはソフィアの夫トーマス・マーズのフレンチ・バンド、フェニックスに託された。 娘を乗せた車のハンドルを自ら握り、おとぎの国を後にするプリシラ。その胸の裡を、ドリー・パートンが歌う「オールウェイズ・ラブ・ユー」に語らせる心憎いラストの演出にもほろりとさせられる。 『プリシラ』 4月12日(金)TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー BY REIKO KUBO