自由か? 安心か? すべての区立公園に防犯カメラ設置を決めた荒川区
小さな公園についても住民から要望
昨年10月に施行された条例は、防犯カメラの設置に法的根拠を持たせたことになりますが、同条例の成立を受けて、荒川区は区内の全33か所の区立公園にも防犯カメラを設置する方針にしています。 大きな公園と近隣住民だけが利用するような小さな区立公園では、同じように論じることはできません。小さな公園では雑踏による混乱は起きませんし、防犯カメラを設置してしまうと利用者が簡単に特定できます。防犯カメラの設置が“監視”という意味合いを帯び、利用者が窮屈に感じてしまえば、公園から利用者がいなくなるでしょう。これでは、せっかく快適な公園をつくるために設置した防犯カメラの意味がなくなってしまいます。 「防犯カメラの設置は、荒川区が公園の改修にあたって住民説明会を開いたときに、住民のみなさんから『防犯カメラを設置してほしい』という要望が寄せられたことから検討が始まりました。利用者のプライバシーを侵害するのではないか? 公園利用者が減ってしまうのではないか? といった心配はありました。荒川区は各公園に連絡員という管理者を配置していますが、住民の要望である防犯カメラの設置についても連絡員にも意見を聞きました。その結果、全区立公園に防犯カメラの設置を決めたのです」(同)
住民のプライバシーを侵害しない方策は?
防犯カメラの設置にあたり、利用者のプライバシーを侵害しない、足を遠のかせないためにどんなことを工夫したのでしょうか? 「防犯カメラの設置は決まりましたが、設置場所や細かな運用は有識者で組織する個人情報審議会に諮って決めます。個人情報審議会で承認されないと、防犯カメラの設置はできないようになっています。また、防犯カメラの映像は警察や裁判所といった事件の捜査関係目的外で使用することはありませんし、録画された映像は1週間後に上書きして消去するルールにしています。そのほか、プライバシーを守る配慮として『周辺民家が映らないようにする』、『トイレにカメラを向けないようにする』、『公園利用者が知らないうちに撮影されたといった事態も起こらないように、公園内には防犯カメラが設置されていることを知らせる掲示をする』といったことも徹底します」(同) 治安対策のために公園内に防犯カメラを設置しようという動きは、荒川区以外の自治体でも広がっています。誰もが利用できる公園だからこそルールとマナーが重要になるわけですが、「自由か?それとも安心・安全か?」といったせめぎ合いは、今後も議論されることになるでしょう。 (小川裕夫=フリーランスライター)