ドラマから実話へ
パラレルプロセスにどう対処するか
英国のコーチング実践家であるジェニー・ロジャース氏は、その著書(※)の中で、パラレルプロセスが起こる背景を次のように分析しています。 1.話を聞きながら、話している相手に過度に共感することで、無意識のうちに相手の課題を理解しようとし、そのことから相手の心のうちに入り込み、自分と似たところがないかを探す 2.話している相手は、聞いている相手に何とか解決策を見出してもらおうと、無意識に問題についての一幕とその迫真さを再現しようとする 3.話を聞いている側は、相手の激しい感情にどう対処してよいかに逡巡し、そのことで不安を感じ、気持ちの中でパニックのような状態が生まれる ちなみにロジャース氏は、最後の要因が最も大きいのではないかと指摘しています。 パラレルプロセスから抜け出すために、ロジャース氏は、下記のようなシンプルで現実的なアプローチを提案しています。 1.座る姿勢を変える 上司やコーチと相手が陥っているトランス状態を断ち切ることにつながる 2.軽いブレイクを入れる ストレッチをする、コーヒーブレイクを提案するなど 3.課題から離れるコメントや質問を挟む 「これまでの話をまとめると、A、B、Cということですね?」 「少し混乱しています。もう一度、現状を確認させてください」 ポイントは、今起きている関係性に何らかの形でブレイクを入れることのようです。
パラレルプロセスを解除する
先のマネージャーの話は、前職で新任マネージャーだった私自身の話です。私の話を聞いた当時の上司は言いました。 「なるほど。それは、君自身のエンゲージメントの話だね?」 上司からそう返され、我に返りました。パラレルプロセスが解除され、大きく膨れ上がっていた外側の問題が、自分のテーマに変化していきました。 人が批判的に語る話は、その人が創り上げたドラマなのかもしれません。 そのドラマを信じ、解決に乗り出す前に、少しのブレイクを入れ、パラレルプロセスを断ち切ってみる。そして、あらためて本当に起こっているストーリーの主役との対話を試みる。 ドラマが実話に近づくにつれて、問題も消失していくかもしれません。