1秒に泣きリオ五輪切符逃した小原怜が大阪女子マラ意地の日本人トップ2位も……東京五輪代表争いに課題残す
瀬古利彦・日本陸上競技連盟の強化委員会マラソン強化プロジェクトリーダーも「小原はMGCの出場権を持っている余裕が走りにも感じられた。ただ、タイムを持っているので、できれば優勝してほしかった」と不満顔。 「2回仕掛けたのは悪くないけれど、余裕がないのにスパートしたらいけない。それだったらスパートしない方がいい」と手厳しかった。 期待が大きいからこそだろう。辛口の武冨監督も「自分で行けると思ったときに行けるかどうかだったが、やはり弱さが出た。行き切るだけの思い、最後失速してもいいという覚悟がないと。それができれば変われると思う。能力はあるので、それを引き出せなかったのが悔しい。これを次にいかしてほしい」と話す。 もっとも、今回の小原はベストコンディションでなかったことも確かだ。年明け5日の山口・大島合宿で腰痛を発症。「2週間ほど練習できない時期があった」という。 「走りたいのに走れない。感情をうまくコントロールできない状態になった」とも話した。 そんな調整不足のなかでも今回勝負したのは理由があった。忘れもしない2016年3月の名古屋ウィメンズ。2時間23分20秒の自己ベストをマークしたものの、田中智美(第一生命)に1秒差及ばず、同年のリオデジャネイロ五輪の道を断たれた。あんな思いは二度としたくなかった。 翌年の2月には左足小指を骨折する不運。精神的に落ち込み、スランプに陥った。引退も考えなくはなかった。 「足が思うように動かず、走り方が分からなくなった」 そんな苦難を乗り越えての今大会。チームの先輩で昨年優勝した重友梨佐には刺激を受け続けていたようで、先輩の引退に「走る姿を見て諦めてはいけないと思う。 苦しくても、それを超えた先には何かがある」ということを学んだ。もちろん、後輩の前田穂南とはいいライバル関係にあり、武冨監督も「切磋琢磨してMGCを目指して行かせたい」と言う。 今回、仕掛けて仕掛けきれず、目標にしていた自己ベストの更新も初優勝もかなわなかったが、得たものがないわけではない。 「足が動かなかったり、走るのが怖いときもあった。でも、きょう、自分は走れる、上を目指せるんだと思えた」と小原。9月のMGCに向けては「自分がどうしたいのか。どんな自分でいたいのか、それをインプットして1日1日積み重ねること。ひとかわむけた自分になっていた」 そう言って、最後に笑顔を浮かべた。 少しずつ、小原は前進している。自分に足りないものはなにか分かった。 一発勝負で3人の東京五輪代表中2人を決める9月の東京でのMGCには、現在、8人がファイナルメンバーに入っている。 ノミネートされている中で、唯一、2時間21分台を出していて2017年世界選手権代表の安藤友香(スズキ浜松AC)、前回の大阪女子を2時間22分44で制した松田端生(ダイハツ)、天満屋の同僚で、2017年の北海道マラソンで優勝した前田穂南、昨年の真夏の北海道でマラソンに初挑戦して2時間28分32秒ながら優勝した鈴木亜由子(日本郵政)らのライバルがいて、3月の名古屋では、すでにファイナル入りしている岩出玲亜(アンダーアーマー)、MGC出場権を狙う清田真央(スズキ浜松AC)、上原美幸(第一生命)らが出場予定。瀬古氏は、MGC資格者が少ないことを嘆いているが、小原の真価を問われる本当の勝負レースまで時間は、そう残されていない。 (文責・山本智行/スポーツライター)