音を聞いているのは、耳でなく脳だった!~改善できる危険因子・難聴③
補聴器の仕事とは?
しかしこうなると、気になるのは、「調整」だ。 調整がトレーニングの肝ということだが、なにをどう調整するのか。AIではダメなのか? 理解するために、そもそも補聴器とは何をするものなのかから見ていこう。 補聴器とは、シンプルに言えば、小さい音では聞こえなくなった人の耳元で、音を大きくしてあげるものだ。ただし、全ての音が大きく聞こえたら騒音になってしまうので、「いい塩梅に」音量を「調整して」届けている。 90年代以降の補聴器はデジタル化されていて、届いた音を器械でデジタル処理することができる。処理する時に、装用者 が不快と思われる大きさの 音は増幅させなかったり(=「オートマチックゲインコントロール(自動利得調整)機能」=AGC) 、一般的に騒音と思われる音や耳障りな音は最初から抑制したりもする(=「ノイズリダクション(騒音抑制)機能」=NR) 。また、音を増幅する時に生まれる不快なハウリング音も同じく抑制することができる。これらの基本的な機能は補聴器にはあるが、安価な集音器にはないことが多い。よって、集音器を買おうとしている人は確認するといいだろう。 その後、個々人の聴力に合わせて補聴器の機種やタイプを選び、細かい調整を行っていくのだが、調整する時の指針となるのは、「聴力検査」の結果である。 図は聴力検査の結果例だが、縦軸の「聞こえづらいポイント(=大きい音でないと聞こえない場所)」が横軸の周波数ごとに違っているのがおわかりいただけるだろうか。さらに言えば、左右の耳でもかなり違っている。ここから想像できるのは、「足すべき音量」が、一つの耳においても「周波数ごとに違う」ということと、一人の人間の左右においてもかなり違うということだ。つまり、補整すべき周波数も、その周波数ごとの補整すべき音量も、一人一人の耳ごとに違うのだ(よって、集音器は加齢性難聴の聞こえの助けにはなりづらいだろう)。