「日本の成長には大学の協力必要」 世界を目指すハンドボール新監督の願い「私がコーチなら…」
ハンドボール日本代表が合宿公開
ハンドボール男子日本代表のトニー・ジローナ監督(51)が、大学生にラブコールを送った。来年1月の世界選手権(クロアチアなど)を目指すチームは1日、東京・北区の味の素ナショナルトレセンの強化合宿を公開。選手20人は全員がリーグH所属で「大学生も呼びたかったけれど、返事はノーだった」と残念そうに話した。 【画像】「とっても可愛いし、美しい!」 世界の美女ハンドボール選手の画像 ジローナ監督はパリ五輪後の就任当初から積極的に若手を起用してきた。8月のパリサンジェルマン戦も10月中旬の合宿も、パリ五輪でブレイクした藤坂尚輝(22=日体大)ら5、6人の大学生が名を連ねた。しかし、今合宿と4日からのエジプト遠征に大学生は参加しない。 不参加の理由は、4日から函館で行われる大学選手権と日程が重なったから。大学にとって最も重要な大会だけに、チーム側も選手の招集に応じられない事情がある。ジローナ監督も「大会が大切であることはわかるし、今回は(参加が)難しかった」と理解を示した。 それでも、合宿だけなら参加することは可能。大学選手権にも間に合うし、代表での経験をチームに還元することもできる。「もし私がコーチならば、合宿に参加させてチームに戻すと思う」。チーム作りの初期段階に期待の若手がいないことを残念がった。 これまで、日本代表の主力は国内リーグの選手。藤坂のように大学生が抜擢されることはあったが、ごく一部だった。しかし、ジローナ監督は若手の起用に積極的。リーグHと合わせて大学の試合にも足を運び、時にはトレーニングを視察することもあるという。
若手育成に定評、ジローナ監督「日本にはスピードある楽しみな若手が多い」
スペインの強豪バルセロナで育成年代の強化を担当するなど、若手を育てることに定評のあるジローナ監督。「日本にはスピードある楽しみな若手が多い」と話すなど、代表選考の対象も大学生や高校生にまで及んでいる。「日本代表がステップアップするには、大学との協力が必要になる」とも話した。 若手育成が得意なだけに、大学の強化も気がかり。「大学の監督たちには感謝するし、大変な努力をしていると思う」と評価しながらも「1人のコーチが多くの選手を指導することは難しい。選手数を制限して20人くらいにすれば、ボールを触る回数も増えるし、指導もやりやすくなる」と私見を口にした。 若手選手を育てるために、来月には指導者セミナーも計画している。来年1月の世界選手権には、今合宿のメンバーに欧州組を加え、さらに大学生も招集する予定。「まずは日本代表と大学との連携が重要」と代表チーム作りに大学が欠かせないことを強調した。 ユース、ジュニア世代でアジアを制した今の大学生、高校生には将来期待される選手が多い。日本協会の荷川取義浩ハイパフォーマンスディレクターも「今後は大学と代表の日程もすり合わせていきたい」とジローナ監督からの要請を受けて話した。 新監督のもと、新たなスタートを切る「彗星ジャパン」。今合宿参加メンバー20人のうち、パリ五輪組は玉川裕康主将(29=ジークスター東京)ら5人だけだ。ジローナ監督は世界選手権を「ロス五輪に向けて、しっかり踏み出さないといけない最初の一歩」と位置付け「目標は1次リーグ突破」と宣言。ロスへの戦いが始まる。(荻島弘一) 荻島 弘一 1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。
荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima