ファミレス勤務ですが、走り回る子どもに「危ない!」とつい怒鳴ってしまいました。子どもの母親に「お客に何を言うの!」と叱られ店長とともに謝罪したのですが、どうすれば良かったのでしょうか…?
客の安全を守るのは、事業者としての一番の責務です。子どもが走り回って転んだり、熱い料理を運ぶ店員さんにぶつかって、子ども本人や店員、他の客がやけどしたりしたら大変です。緊急時には叱りつけてでも危険行為を食い止めるのは、適切な行動と考えられます。 一方で「危ない!」と怒鳴られた子どもの保護者が腹を立てることもあるかもしれません。このような緊急時の対応は正しかったのでしょうか。ポイントをまとめてみました。 ▼毎日「8時50分」から朝礼が! 定時は9時だけど「残業代」は請求できる?「義務」か判断するポイントとは?
店内で走り回る子どもには、さまざまな危険がある
店内で走り回る子どもには、さまざまな危険があります。転倒、什器など設備にぶつかってけがをする、他の客や店員とぶつかるなどのリスクがあります。 とりわけ飲食店の場合、熱い料理を運ぶ店員にぶつかったら、やけどをする可能性もあります。子ども本人だけでなく、ぶつかられた店員、さらにそばにいる別の客にも危険が生じかねません。ファミレスであればドリンクバーやスープバー付近で客とぶつかり、熱い飲み物などがこぼれてやけどをするような事故も考えられます。 国土交通省国土技術政策総合研究所が建物内で起きた事故をまとめた「建物事故予防ナレッジベース」によると、次のような事故も実際に起こっています。 ・食堂内にいた子どもが食堂のガラス戸の外に立つ父親を見て、ガラス戸が開いていると思い込み、走って父のもとに向かいガラス戸に激突して死亡した。 走り回るだけではなく、ふざけて遊んでいて事故になったケースもあります。 ・ファミレスで子どもがテーブルに手をつき足をブラブラさせてふざけていた。何度も注意したが手を滑らせて転び、テーブルの金具で耳を切り、血が止まらず救急搬送された。
事故発生時にはさまざまな法的責任が問われる
このような事故が起こったとき、店にはさまざまな法的責任が問われることになります 。 多くの顧客が出入りするのですから、安全性が確保された設備を用意し、管理しなければなりません。このような注意が不十分であれば安全配慮義務違反として、債務不履行責任、不法行為責任、あるいは工作物責任(建物の設置者・利用者としての責任)などに問われることになります。 安全配慮義務違反は、事故の予見可能性があったか、結果を回避できたか、その結果回避義務を怠っていたか、ということを考慮して判断されます。 子どもが走り回っていれば、店のスタッフとして事故が起こることは当然に予見できたはずで、注意して止めれば事故は防げたのです。事故が起こったら店が責任を逃れることは難しいでしょう。 もちろん、小さな子どもの場合には、親の監視監督義務が強く求められます。目を離した隙に事故に遭った、あるいは一人で行動する子どもを放置していたといった場合には、親の監視監督義務違反という重大な過失と見なされ、仮に裁判になった場合には、過失相殺などで考慮されることになります。 とはいえ、事故が起こってから「親が目を離していたのが悪い」などと言ったところで、取り返しはつかないのです。お店としては事故を防ぐための最善の努力をすべきでしょう。