向井 理×勝村政信のバディが創り上げる英国発のゴシック・ホラー劇
『ウーマン・イン・ブラック~黒い服の女~』は1987年にイギリスで舞台化され、12言語に翻訳、40か国余りで上演された恐怖劇の傑作である。日本で8度目となる今回の公演には、向井 理が初めて挑む。向井はこの戯曲を通して、どんな“顔”を見せてくれるのだろうか 【写真】向井 理さんインタビューフォト
2人芝居から生まれるものとは?
“恐怖”という感覚を見事にエンターテインメント化した『ウーマン・イン・ブラック~黒い服の女~』。登場人物は、中年の弁護士・キップスと若い俳優というたった2人で、この若い俳優を向井 理が演じる。そして相手役を演じるのは、勝村政信。日本でも名だたるキャストたちによって上演を重ねてきた本作に、その名を連ねた2人が創り上げる世界には、どんな化学反応が起こるのか、期待が募る。 向井 理(以下、向井) この作品に出演させていただく上で一番の魅力は、勝村さんと芝居ができることです。これまで勝村さんとご一緒したことは一度くらいしかなかったのですが、最近になって立て続けに映像で共演させていただく機会がありました。そのことにご縁を感じます。以前、勝村さんからサッカーに誘われて一度だけやったことがあるんですが、まるでサッカーのついでにお芝居をしているような人だと思ったことがありました(笑)。取材の時にサッカーを通して知り得た勝村さんの人柄について聞かれたので、「勝村さんはメインがサッカーになっていて、お芝居で吸収したことをサッカーに生かしていて、お芝居は踏み台にしています」って僕が冗談っぽく話していたら、それを聴いていたご本人は「おっしゃる通りです」って即答されていました(笑)。 言葉の端々から、2人の仲の良さが伝わってくる。作中では、キップスが、自身が過去に体験した忌まわしい出来事から解放されたいがために、その手助けとして若い俳優を雇う。キップスの告白が長いことから、その俳優からは「“若き日のキップス”を俳優が演じ、“キップスが出会った人々”をキップス自身が演じることで、キップスが体験した出来事を再現する」ことを提案される。その“芝居”が始まり、物語の進行とともに、予測不可能な展開と結末が待っている……。 向井 今回は僕が演じる「若い俳優」という役どころがキップスの若い頃を演じるという構成ですが、どんなキップスを目指すのかは決めていません。稽古は一か月あるので、勝村さんの演技を拝見することで何か見えてくるものがあるのではないでしょうか。2人の関係は芝居をやる上で教える側と教わる側というのがわかりやすくて、僕は年下だけれどもキップスに教える側なので、ちょっと生意気だったり、プライドが高かったりする面があるのかなと考えると、最初は、キップスをちょっとイラッとさせてもいいのかなと思います。そこを入口にしますが、こういう人だと固めずに演じていくつもりです。 脚本を読んだ向井は、作品の印象についても語った。 向井 読み始めると不穏な空気が漂っているんですが、それが何なのかが、なかなか見えて来ないので、どんなオチが待っているのかと思いながら読み進めました。そして最後まで行くと、すごくぞっとするような話なのですが、それが簡単にネタバレにならないように、うまく出来ているんです。僕は実際に作品を拝見したことはなく、台本を読んだだけなのですが、“体験型”の作品になるのではないかと思いました。劇場の中で2人が話しているという設定なので、僕たちからは見えていないだけで、お客さんたちもその劇場の座席に座っている観客であり、出演者でもあるという構造になっています。だからこそお客さんも作品に没入できるのではないだろうかと思いました。 物語の一部になれる感覚を味わえるのは、演劇の醍醐味でもある。作品を通して伝えたいこととは? 向井 勝村さんも僕も、“楽しませたい”という気持ちが結構強めなので、稽古を重ねることでエンターテインメントとして楽しんでいただくのにはどうしたらいいのか、というアイディアがいろいろと出てくるのではないかと思っています。ご覧になる方も身を委ねていただけたら、今までに見たことのない世界を見ていただけるのではないでしょうか。 向井 理(MUKAI OSAMU) 神奈川県生まれ。2006年に『白夜行』でドラマデビュー。以降、多くのドラマ、映画、舞台作品で活躍。NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』(2010年)、NHK大河ドラマ『江~姫たちの戦国』(2011年)、映画『僕たちは世界を変える事が出来ない。』(11年)、ドラマ『パリピ孔明』(23年)など出演多数。直近では『ダブルチート 偽りの警官』に出演